「言っておくけど、拒否権なんてあってないようなものよ。仲間になるか死ぬか……どうする?」
腕を組みながら、琴音が高圧的に言った。
そう言われれば分かりやすい。腑に落ちたように降参する。
「分かった、そういうことなら仲間にしてくれ! もうおまえらを襲ったりしないから」
協力し合えることは、陽斗の異能にとっても好都合だった。
戦いを好む彼自身にとっては少々煩わしくはあるものの、命には代えられない。
「本当だな? その言葉破ったら、小春が許しても俺は許さねぇぞ」
「うん、本当だって。今日のことも謝る。ごめんな!」
その素直な態度を受け、小春は窺うように慧を見上げた。
彼は小さく息をつき、頷く。
ほっとした。陽斗のことを殺すという展開にはならずに済みそうだ。
「陽斗くんの能力について教えてくれない?」
「俺の異能は“コピー魔法”。最大で5種類まで、ほかの奴の異能をコピーしてストックできる。俺が上書きするか死なない限りは、半永久的に保存されてる」
合点がいく。だから、奏汰の氷魔法が扱えていたのだ。
そして、彼自身は水魔法の使い手でもなかった。
「この手で触ることでコピーできるんだぜ。あくまで能力だけな。物体はコピーできない」
「奏汰にも触れたってことだよな。どうやって特定したんだよ?」
「ちょっと待て、カナタって誰?」
蓮の問いかけに、困惑気味に聞き返した。
「俺は結構鼻が利くんだけど、確実に魔術師を見分けるのは無理。だからさ、怪しい奴には口実つけて触れてみて、コピーできたらラッキーみたいな感じなんだ」
小春を魔術師だと見破ったのも、陽斗の嗅覚によるものだったのかもしれない。
実際、コピー魔法は便利だけれど、魔術師を見分けられなければまったく役に立たない。
ストックがなければ、ほとんど“無魔法”同然なのだ。
「あと……仲間になったってことで、大事なこと話しとくな」
陽斗は胡座をかきながら、真面目な顔で言葉を紡ぐ。
「“異能はひとり5個まで”ってルールがあるじゃん? 俺の能力の特性上、このコピー魔法以外の異能を保有することはできないんだ。代わりにストックに貯めることになる」
その制約がなければ、最大で10個の異能を操れることになる。
そう考えれば妥当と言えた。
「それと、コピー元よりも制限がかかる。たとえば、攻撃系の異能は威力が減少するとかな」
彼の行動にも納得がいく。
よりよい異能をコピーして手に入れるために好戦的で、だからこそ自身が魔術師であることを隠す気がなかったのだ。



