「保証? 画面も見てないのに何で分かるの?」

「小春がそう言ったから」

 真剣な顔で言ってのけた蓮に、小春は嬉しいような気恥ずかしいような気持ちになった。

 それほどまでに信用されているとは思わなかった。

 瑠奈は可笑しそうに笑う。

「何それ、そんなの何の根拠にもならないし」

 腕を組んだ瑠奈は二人に詰め寄った。

「じゃあ、何? あの場にあたしと小春ちゃん以外にもう一人誰かがいたって言うの?」

「……そうとしか考えられない。だって、私は何もしてないから」

「小春ちゃんはそいつのこと見たの?」

「それは────」

 見ていない、というのが答えだった。

 あの場に第三者がいたと主張する小春自身、それが信じ難いのだ。

 瑠奈が消えた後、誰の姿も気配もなかったのだから。

「もういい。どうせならもっと上手に嘘ついてよね」

 瑠奈はカーディガンの袖口からステッキを取り出した。

 昨日のことを思い出した小春は思わず身を硬くする。

 蓮はすぐさま小春の前に立ち、いつでも応戦出来る態勢を取った。

「二人まとめて石にしてやる」

 瑠奈はステッキを向ける。

 やむなく蓮が炎を宿そうとしたとき、不意に声がした。

「……まったく、血の気が多いわね」

 そう言いながら現れたのは、琴音だった。

 小春と蓮は瞠目する。いったい、いつからここにいたのだろう。

 瑠奈も驚いたものの、今度は琴音にステッキを向けた。

「いつからいたの!?」

「和泉も、あなたの仕業なのね。石化魔法か……」

 琴音は瑠奈の問いかけには答えず、淡々と言った。

 その口振りから、琴音自身も魔術師であることが分かる。

 しかも、この場において、それを隠そうという気はさらさらなさそうだ。

「それで、和泉からはどんな魔法を奪ったの?」

「か、関係ないでしょ! 邪魔しないでよ。小春ちゃんたちを殺ったら次はあんたの番だからね」

 強気に息巻く瑠奈。

 一方の琴音は、涼し気な顔で口端を持ち上げた。

「頭を冷やしなさい。……また、飛ばされたいの?」

 小春も蓮も、はっとした。

 昨日、小春を助けた魔術師の正体は、琴音だったのだ。

 瑠奈は慌てて琴音から距離を取った。

 すっかり余裕を失い、恐れをなしているのが見て取れる。

「遠慮しとく! 今日のところは見逃してあげるけど、覚えておいてよ!」

 仔細は不明だが、身をもって琴音の魔法を体験した瑠奈は、敵わないと判断してか早々に退散した。



 小春は琴音に向き直る。

「あの、ありがとう。瀬名さん」

「気にしないで。大変な目に遭ったわね 」

 小春を労る琴音の眼差しは、思いのほか柔らかく優しかった。

 てっきり、もっと冷たい性格で、他人に無関心なものだとばかり思っていた。

「……お前も、魔術師ってことで良いんだよな」