ウィザードゲーム〜異能バトルロワイヤル〜


 いつの間に、と小春が思わず蓮を見やると、彼は「余計なこと言うな」と奏汰に抗議していた。

「ごめんごめん。ちなみに俺は“氷魔法”と“硬直魔法”を持ってる」

 ふたつ────琴音と慧が驚きをあらわにする。
 小春は以前、蓮が話していたことを思い出した。

 異能の会得方法は、自身の何かを犠牲にガチャを回すか、あるいは魔術師を殺して奪う。

 後者の方法は他校の魔術師から聞いたと言っていた。恐らく、それは。

「先に言っとく。俺は人を殺した」

 それぞれが息をのむ。

「正当防衛だったけど、結果的には俺が殺したのと同じ。……それで分かったんだ。死んだ魔術師から異能を奪えるってこと」

「なるほど。力を得るには、やはり何らかの代償が必要なんだな」

 納得したように慧が呟く。

 人を殺すという行為は、手を下す側にも一生逃れられない呵責(かしゃく)の念を負わせる。
 たとえ、罪には問われずとも。

「……そうだね。氷の方は最初にガチャから引いた。代償は左腕」

 ぽん、と右手で自身の左腕に触れる奏汰。
 厚手のカーディガンを着ているせいで気づかなかったけれど、確かに腕が片方しかない。

「マジで、何で“四肢”にしたんだよ? 一番不便だろ」

「だって“四肢”なら死にはしないの確定してるし。出血もしなかったよ」

 そういう考え方はなかった。小春は驚く。

 確かに出血多量という概念がないのなら、腕や足の1本を失っても死にはしない。
 “臓器”を選ぶよりよほど安全かもしれない。

 だからといって、小春に同じ選択ができるかと言われれば、そんなことはまったくないけれど。

「入院っていうのはそういうことなのね」

「うん。事故ってことになってる」

 琴音の言葉に頷くと、それから眉を下げる。

「でも、確かに困ってるんだよね。片腕しかないから使い勝手悪いし、氷と硬直って何か能力的に被るとこあるから持て余しそうだし」

「硬直魔法というのは、具体的にどういうものなんだ?」

 そう尋ねられた奏汰は、拳を作った自身の右腕を軽く掲げる。

「立ち上がってみて」

 慧は言われた通りに腰を浮かせようとしたものの、意思に反して動けなかった。
 視線を動かす以外、身体が動かない。金縛りのような状態だ。