小春は話題を切り替えた。
このゲームに向き合おうとするほど、その部分への疑問が強くなる。
“人間ではない”ということは共通認識としてあるのだろうけれど、だったら何だと言うのだろう。
「さあ……? 運営の情報は欲しいけど、なかなか調べようがないのよね」
「あのメッセージは、文体や口調にまるで統一感がない。人物像をぼかすためにあえて……というのはあるかもしれないが、単純に考えれば送信者はひとりじゃない、ってことだろうな」
慧は妥当な推測を口にした。
けれど、謎はむしろいっそう深まるばかりだ。
「わたしたちのクラスに恨みがある、異能者の集団?」
「それなんだけどさ、魔術師は俺たちのクラス以外にもいるぞ」
慧は意外そうに目を見張る。
「でも、そうか。和泉は捨て身覚悟で襲われたのかと思っていたが、犯人は胡桃沢だった。その胡桃沢はペナルティを受けてないようだしな」
瑠奈が魔術師であることは既に琴音から伝達済みだった。
魔術師が2年B組にしか存在しないと仮定すると、他クラスの和泉を殺害した瑠奈は、ルール違反で魔術師の資格を剥奪されていたはずだ。
けれど昨日、彼女は確かに異能を使用していた。
ペナルティを受けていないということは、和泉は魔術師だった、ということなのだ。
琴音は眉をひそめる。
「2年B組の殲滅なんてはったりで、ただ異能力を与えられた人間が右往左往する様を見たいがための……“暇を持て余した神々の遊び”なんじゃないの」
「だが、それならわざわざあんなメッセージを送る必要ないだろ。ゲームのようにする必要もない。……まあ、もっとも、だからこそこの状況を楽しんでる、悪趣味な連中だと言いきれるんだけどな」
そのため、琴音の言葉の後半はいくらか合っていると慧も思っていた。
ただ見たいだけなのか、戦わせることに意味があるのかは不明だが。
「あーもう! いいよ、そういう分かんねぇことはあと回しで」
「言い出したのはおまえと水無瀬だろ……」
「そうだけど、俺はそんな話がしたいんじゃねぇんだよ」
困惑する慧に蓮は言った。
「魔術師の話だけど、他クラスだけじゃない。他校にもいるんだって」
さすがに琴音も驚きをあらわにした。
あらかじめ軽く聞いていた小春も、それがいかに不自然な事実かを改めて認識する。
「どういうこと? なら、やっぱり“2年B組”に意味なんてないんじゃないの?」
皆殺しなどという脅し文句のもと、それを起爆剤に殺し合う様を運営側は鑑賞したいのかもしれない。
危機感を持たせるためだけに添えられた文言なのかもしれない。
実際、嫌でも他人事でなくなった。当事者にされた。
「……その他校の魔術師は、向井の知り合いか?」
「ああ、1個上だけど俺の親友だ」
「だったら、都合がいい。少なくともメッセージの謎は、その人に聞けば解けるだろ」



