ゲーム……? と、小春は訝しげに首を傾げた。
連絡を絶ったことが、スマホのゲームか何かと関連があるというのだろうか。
「ていうか、ゲームとか絶対関係ないだろ」
「だよな」
同様の疑問を抱いたらしい部員たちは口々にそう言った。
しかし、蓮は神妙な表情を浮かべたまま何も言わない。
「蓮……? どうかしたの?」
堪らず小春は声を掛けた。はっと蓮は我に返る。
「ああ、悪ぃ……。心配だし、和泉には俺からも連絡してみる」
「うん、頼むわ。何か分かったらまた話すから。じゃあな」
手を振る部員たちに片手を上げ答える蓮。
去り際、会釈された小春は同じように返して彼らを見送った。
思わず蓮を見つめる。
「……何だよ?」
「……ううん、何も」
蓮は小春の飲み込んだ言葉に気が付いたものの、あえて聞かなかった。今の小春に言えることはないからだ。
「心配だね、和泉くん……。大丈夫かな」
小春は不安気に顔を曇らせる。
もしや、何らかの事件に巻き込まれたりしていないだろうか。
「……無事だと良いけどな」
ぽつりと蓮も呟いた。
既に和泉の身に危険が迫っていることを前提としているようで、胸騒ぎが増幅した。
何気なく窓の外に目をやった小春は、妙なものを発見した。
「蓮、あれ何だろう?」
「ん?」
二人して窓に寄る。
外はちょうど中庭になっており、芝生や木々が植えられ緑豊かな空間だ。
小春はその一角にある低木を指し示していた。
「手……?」
低木から生えているような形で、手を模した石像が置かれていた。
特にポーズを決めているわけでもない自然体の手だが、だからこそ手招きされているかのような不気味さがあった。
「ちょっと、行ってみよう」
「……マジか?」
奇妙な石の手に誘われてか、小春は中庭へ足を向けた。
蓮は驚いたものの、特に反論せずその後を追う。確かにあれが何なのかは気になった。