「その反動ってどんなもんなんだ?」
「基本的に短時間のうちに連続で能力を使用したりすると起こる。主に頭痛、吐血、震え……身体からの警告だな。反動を無視して使い続ければ死に至る」
恐らく人間の身体は本来“異能”などという特殊能力に対応していないために起こるのだろう、と慧は考えている。
あるいは単にゲームを盛り上げるための要素かもしれない。
「うわ、そうなのか。気をつけねぇとやべぇな」
「向井の能力は何なんだ?」
「ああ、俺は火炎」
先ほどの慧のように一瞬だけ手に炎を宿してみせた。
ふっとあたたかい空気がよぎる。
「へぇ……。便利だし強力ね」
琴音は感心したように言う。
仮に戦闘という場面になったとしても、主戦力になるだろう。
「水無瀬は?」
「わたしは……何もないの」
慧に問われ、小春は俯きがちに答えた。
こうも強力そうな異能を持つ面々に囲まれると、何だか気おくれしてしまう。
「代償が怖いし、殺し合いとかも……したくないし」
言いながら、自信を失ってしまう。
自分の持ち合わせた道徳観や倫理観が間違っているのかもしれない、という気がしてくる。
この状況において小春のしていることは、周囲に甘えきったわがままでしかないのかもしれない。
「だが、それじゃ危険だろ。能力の使用で魔術師だとバレることはないが、魔術師を見分けられる奴に遭遇したらどうする。対抗手段もない」
「いいんだよ、俺が守るから。それは心配いらねぇ」
「そういうことならわたしたちも水無瀬さんを守るわ。仲間なんだし」
同調した琴音は慧を見やる。
「いいわよね」
「……ああ」
小春は曖昧な笑顔で「ありがとう」と告げたものの、微妙な心情だった。
守ってくれるというのはありがたいことなのだけれど、その厚意を無遠慮に受け取れない。
みんなに負担や迷惑をかけてしまう。
荷物になりやしないだろうか。
ただ、勝手な理由でゲームやガチャを拒絶しているだけなのだ。
頼りきるのは心苦しい。
「……ねぇ、あのメッセージって誰が送ってるのかな?」



