ウィザードゲーム〜異能バトルロワイヤル〜


 不満気な彼に、あっけらかんと返す琴音。
 慧は息をつき、3人に歩み寄ると少し離れた位置に腰を下ろした。

「さて、役者が揃ったことだし────わたしと望月からひとつ提案させてもらうわ」

 毅然とそれぞれの顔を見やる。

「わたしたちで共同戦線を張らない?」

 小春と蓮は顔を見合わせた。共同戦線?

「同盟を結んで、4人で仲間になるの」

「あー、ソシャゲで言うギルドみたいなことか?」

「そういうこと」

 蓮の問いかけに琴音は頷く。

「このゲームはいわゆるバトルロワイヤル。だけど、チーミングは許容されてるみたい。人数がいた方が何かと有利に決まってるわ」

「確かにな」

 普段それほど熱心にゲームをしない小春にとっては馴染みのない単語が頻出(ひんしゅつ)し、首を傾げてしまう。

 けれど、言いたいことは分かる。
 4人でチームを作って協力しよう、ということだ。

 味方がいる方が何かにつけてうまく事が運ぶだろう。生き残れる可能性も高くなる。

 最終的にどうなるにしても、格段にリスクが下がる。
 不明点の多いこのゲームにおいて、情報も得られるかもしれない。

 蓮は窺うように小春を見やる。

「どうする? 小春」

「わたしは、みんながいいならそうしたいかな……。その方が心強いし」

「なら、俺も賛成」

 琴音は口元を綻ばせ、慧は数度頷いた。

「よかった、決まりね」

「じゃあ、能力の共有をしておこう。それが分からないんじゃどうしようもない」

 そう言った慧は立ち上がり、3人のそばに座り直した。
 軽く手を掲げると、バチバチと音を立てながら青白く細い稲妻(いなずま)が走る。

「僕の能力は見ての通り。雷のような電気を操ることができる、というものだ」

 そう言うとすぐに能力を解いた。
 立ち入り禁止の屋上には自分たちのほかに誰もいないけれど、校舎内のどこから見られるか分からない。

「瀬名の能力は聞いたか?」

「うん、瞬間移動って……」

「ああ。僕の場合、瀬名のような激しい体力消耗や肉体への強い負荷といった大きな反動はない。一般的な反動と同レベルだな」

 異能力や魔法という非現実的なものに“一般的”という概念が存在するのか、言いながら妙な気持ちになった。

 こんな非科学的な代物が存在するなど、以前なら信じられなかったことだろう。