落ちていった霊媒師が鋭利な氷の角錐に貫かれると、赤色が翻った。
ぽたぽたと尖端から血が滴る。
虚ろな霊媒師の目を見れば、息がないことは明白だった。
「う……っ」
たたらを踏んだ奏汰は再び吐血する。
目や鼻、耳から伝った血の筋を拭い、口元も軽く拭っておく。
ほかのみんなは大丈夫だろうか。
(捜そう……。加勢しないと)
ふらつく足を引きずるようにして歩くと、どうにか呼吸を整えながら校舎内に戻った。
◇
その場に強風が吹き荒れ、轟々とうねる水柱の渦が解けると、ばしゃっと弾けて散った。
「へぇ……。なるほどね」
くす、と祈祷師は蓮を眺めて笑う。
「ボクたちに勝つために、ボクたちに魂を売ったワケね」
確かにその通りだった。皮肉なものだが。
「代償はツイてなかったみたいだけど」
「……黙れ」
不可解なやり取りに小春が首を傾げるうち、球状の炎の塊を蓄えた蓮は、それを祈祷師の足元に投げつけた。
ぶわっと熱気が立ち込め、火の海が広がる。
小春はその隙に両手をかざし、光学迷彩の結界を張った。
空間が歪んで帳が下りる。
「あちち」
ふわりと宙に浮かんだ祈祷師に指先 を向け、光弾を放った。
「!」
ひらりと躱されるも、風の勢いに乗って浮かび上がった蓮が、燃え盛る炎の剣を薙ぎ払う。
とっさに身を引くも間に合わず、切っ先が腹部を掠めた。
「う……」
「……っ」
しかし、顔を歪めたのは蓮も同じだった。
何だかやけに息苦しくて胸を押さえる。
頭痛を覚えた小春も、思わず支えるように額に触れた。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫……」
不安気な日菜に何とか頷いてみせる。
小さく舌打ちした祈祷師は傷を押さえた。
すぅ、と瞬く間に癒えていく。
手をかざすと、足元に湧いた水が波立って火の海を飲み込んだ。
煙の上るそこに降り立ち、指を鳴らす。
さっと立ち込めた霧で視界が白く烟り、光学迷彩の結界が消えてしまう。
つ、と垂れてきた鼻血を拭いつつ、小春はそんな祈祷師を鋭く見据えた。
「キミってさぁ、卑怯な手使ってくるよねー」
「……あなたこそ」
笑っているけれど、苛立っているのが分かる。
負けじと返してどうにか呼吸を整えるも、落ち着かないまま目眩を覚える。
「……?」
やけに大きな反動に困惑していると、おもむろに祈祷師が腕をもたげた。
炎の宿るその指先 は、険しい面持ちで不規則な呼吸を繰り返す蓮に向いている。
「蓮!」
はっと我に返った頃には遅く、連射された炎弾が迫ってきていた。
とっさに床を蹴った小春が突き飛ばすと、庇うように飛び出した。
一発は頬を掠め、一発は右腕に命中した。さらには右の横腹も貫かれる。
「ぃ……っ!」
一拍遅れて訪れた痛みに悶え、衝撃と勢いで倒れ込む。
まるで身体の内側をかき混ぜられているような激痛だ。
どくどくと風穴から止めどなく血があふれていく。
「小春……! 悪ぃ、俺のせいで……っ」
みるみる青白くなっていくその顔を見て、すっかり平静さを奪われた。
急激に寒くなって小春の身体が震えた。
焦点が合わなくなり、世界の輪郭がぼやける。
「わ、わたしが……!」
駆けつけた日菜に頷くと、蓮は天井まで届く勢いの炎で祈祷師と隔てた。
多少の牽制と時間稼ぎになればいい。
「頼む、早く小春を……!」



