「何人も死んだ。きみたちのせいで! 散々振り回された」
「はぁ……。なに、きみ? 正義のヒーロー気取り? いまさらわたしたちを責めてどうなるの? あーあ、イケメンだから新しい魔術師に迎えるのもアリかなーって思ってたけど、どうやら無理そうだね」
うっとうしそうに霊媒師が眉をひそめる。
「どういう意味?」
「教えてあげなーい」
おもむろに足元で炎が燃え上がった。
円形に燃え広がって閉じ込められる。
「……っ」
少し怯みつつも右手をかざすと、地面に魔法陣のような薄氷が浮かび上がる。
炎を覆うと、溶け出した水で火が消えた。
間髪入れず、人差し指と中指を薙ぎ払う。
霊媒師目がけて勢いよく氷の刃が放たれた。
「!」
彼女が地面を蹴って浮かび上がると、虚空をすり抜けたそれはフェンスに当たって砕け散る。
甲高い音が反響した。
「ふーん、そこまで氷魔法を使いこなすなんてなかなか器用だね……」
笑みをたたえるものの、虚勢が垣間見える。
前に対峙した祈祷師より明らかに劣っていることに、奏汰は気がついた。
この分ならひとりでもいけるかもしれない。
しかし、ふと違和感を覚える。
(あれ……?)
じんわりと締めつけるような頭痛がした。
何となく酸素が薄いような気がする。
なぜか手も震えていて、あまり力が入らない。
「何で……」
「あれあれ、どうしたのー? もう疲れちゃった?」
空中に浮かんでいた彼女は、フェンスの上に軽やかに着地した。
「異能は気をつけて使った方がいいよー、天界では」
得意気に言い、くるりと傘を回す。
「人間を忌み嫌って見下してる陰陽師の世界だから、人間には優しくないの。負荷も反動も倍。使うほどきみたちの寿命は急速に削られていく」
そういう理由があるのなら、この状態も理解できた。
陰陽師が姿を現さないのも、だからなのだろう。
「……ご忠告どうも」
奏汰は微笑んだ。余裕はなかったが。
苦しむ羽目になるからといって、異能を使うのをやめるわけにはいかなかった。
どのみち、このほかに戦う手段はないのだから。
手をかざすと霊媒師の立っているフェンスがぱきぱきと凍り、鋭利な氷塊へと姿を変えていく。
串刺しにされる前に、彼女は素早く飛びのいた。
それを見越していた奏汰は逃げ先に回り込み、手にした氷剣を霊媒師の着地と同時に薙ぎ払った。
その腹部に深い切り傷が刻まれる。
「く……っ」
呻いた霊媒師は思わず傷を押さえた。
凍結しているため血は出ていないけれど、深部まで痛みと冷たさが染みる。
「よかった。攻撃は当たるみたいだね」
「……それはどうかな」
霊媒師が傷を撫でると、みるみる氷が消えていき、切りつけた傷までもが癒えてしまった。
目を見張った奏汰は眉を寄せる。
(……こんなの、どうしろって?)
異能による負荷や反動が倍な以上、闇雲に繰り出しても仕方がない。
それでは自滅行為だ。
「見ての通り、わたしにきみの攻撃は効かない。降参するならいまだよ? わたし、きみのこと気に入ってるからさ……苦しませず殺してあげる」
「…………」
奏汰は氷剣を掲げ、一度宙に投げると逆手に持ち替えた。
切っ先を霊媒師に向けると、そのまままっすぐに投げて放つ。
すぐさま指先 を構えた彼女は、迫りくる氷剣に水弾を撃ち込んだ。
跡形もなく粉々に砕け散る。
「素直じゃないなぁ。分かんない? きみの攻撃は効かないんだってば」
「……本当にそうかな?」



