「トーマっちさぁ、勘違いしないでくれる? ボク、別にキミの味方じゃないから」
「何を、いまさらそんな嘘……」
「嘘? あはは、ぜーんぶ事実だよーん。最初に手を組んだのもコトネン殺害のため。そこは一致してたけど、動機がちがった。ボクはあくまで制裁に来てたんだよ」
別に手を貸したわけではないのだ。
冬真は、ぎり、と奥歯を噛み締める。
「そんで、あとは? ……ああ、キミに星ヶ丘の魔術師の人数教えたんだっけ。あれはまあ、ゲームを盛り上げるための粋な計らいってやつよ。だってフツーに考えてアウトでしょ、運営とプレイヤーが結託なんて」
とんだ暴論だ。
無茶苦茶な言い分でしかない。
冬真もまた、彼の気まぐれに振り回されたに過ぎないのだ。
彼の唇がにんまりと弧を描く。
「これで分かったんじゃない? キミも所詮、駒のひとつに過ぎないってこと。……それじゃ、苦しそうだしそろそろ殺してあげようかな────」
祈祷師が再び銃のように手を構えると、小春はとっさに地面を蹴った。
冬真の前に立ちはだかって両手を広げる。
「小春!」
蓮は慌てた。
驚いたのは冬真も同じだった。
「なんの、つもり……? 僕はきみたちの敵で、仇でしょ……」
「そんなこと関係ない。みんな守るって誓ったの」
怒りや憎しみに翻弄されては、目的を見失う。
「おーおー、すんばらしい仲間意識。キミはミナセコハルだね? “前”は逃げられて殺せなかったけど、やっと手を下せそう」
「…………」
「それと、あのときはイタルくんともどもやってくれたよねー。キミに貫かれた肩痛かったんだよー。さすがにやり返していいよね?」
小春は怯むことなく、同じように手を構える。
互いにいつでも弾を放てる状態で対峙していた。
そのとき、ふいに背後で傀儡の遺体が倒れた。
冬真の力が弱まっている。
異能を発動していられるだけの体力がもう残っていないのだ。
「……わたしたちは身を守っただけ」
小春はそう返すと、油断なく祈祷師に銃口を向けたまま冬真に触れた。
これなら、重傷を負った彼でも逃げられる。
「蓮、ふたりを連れて逃げて」
「待てよ、小春は?」
「心配しないで。すぐ追いかける」
不安気に唇を噛んだ蓮は、しかしどうにか折り合いをつける。
「……無茶すんなよ。すぐ戻るから」
蓮はきびすを返して冬真の腕を掴む。
けれど、彼はうなだれたまま動こうとしなかった。
「冬真!」
急かすように叫ぶも、ばっと腕を振りほどかれてしまう。
顔を上げた彼は祈祷師を睨みつけた。
もう言葉はないけれど、やろうとしていることには何となく察しがつく。
「おい冬真、やめとけ。死んじまうぞ」
しかし、冬真は首を左右に振った。
肩で息をしながらも、祈祷師にてのひらを向けると蔦を絡めて捕縛する。
「……っ」
既に息が苦しい。
負傷したせいか、いつもより反動が大きくて頭が割れそうだった。
撃たれた傷が疼き、あふれる血が止まらない。
ひどい寒気に襲われて指先が震えたけれど、ほとんど意地と気力で動いていた。
「ええ? ちょっとー、動けないじゃん。殺されるー」
祈祷師がわざとらしく喚いた。
言葉とは裏腹に、その口調にはまるで緊迫感がない。
冬真は小春にかけられた能力を利用して、空中を滑るように一気に距離を詰めた。
尖った剣のような樹枝を握ると、その左胸に突き刺す。



