思わぬ言葉に小春たちは息をのむ。
「そんな……!」
いったい、いつからだろう。
ずっと演技をしていたとでもいうのだろうか。
祈祷師はにやりと笑う。
「モチロン知ってるよー。記憶操作されておろおろしてたキミは傑作だったな。あんなの普段のトーマっちからは想像もつかないってー」
「はぁ……本当に情けない姿だったよね。しかも、こいつら全員そんな僕につけ込んでさ。僕よりよっぽどヴィランだと思わない?」
「くくく、キミに自覚があったとは」
つい圧倒されてしまう中、ひたひたと忍び寄ってきた悪い予感が背中に張りつく。
「どういうことですか……。どうなってるんですか!?」
「……最悪だな」
この状況が。そして、冬真の魂胆が。
驚いたり怒ったりする気力を失っていた蓮は、それだけを低く呟いた。
────彼は以前、琴音を殺すために祈祷師と手を組んでいた。
そしてもとより、自分たちとは意向が対立している立場にある。
今回また祈祷師と手を組んで小春たちを皆殺しにし、自分ひとりだけ生き残るつもりなのだ。
「ねぇ、もう一度僕と協力しよう。あのとき言ってたよね。また何かあったら、って」
「あー、うん。言ったね」
「じゃあ手を組もう。僕もこいつらの殲滅に全力で力を貸す。全員殺して、唯一の生存者になる。僕だったら、きみたちを退屈させない」
小春たちはただただ惑った。言葉が出なかった。
どうしたらいいのだろう。
冬真が運営側についてしまえば、小春の信念も貫けないかもしれない。
彼だって立場は同じなのに。守るべき相手で、敵対している場合じゃないのに。
けれど、話の通じる相手ではない。
記憶が戻ってしまったのなら、なおさら。
祈祷師は興がるように口角を持ち上げる。
「いいねー、確かにキミは見てて飽きないよ。ボクは大好き。その提案も超面白そう」
「……じゃあ────」
ほくそ笑んだ冬真が一歩踏み出した瞬間、素早く祈祷師が光弾を連射した。
その銃口は、冬真に向いている。
「……っ」
まともに何発も食らった彼は、崩れるように膝を折った。
右胸や横腹、みぞおちのあたりが赤黒く染まる。
突然の出来事に、日菜の悲鳴が響き渡った。
蓮は目を見張り、小春も呼吸を忘れていた。
「お、まえ……」
どくどくと血のあふれる傷を押さえ、冬真は恨めしそうに祈祷師を睨む。
当の彼は相変わらずへらへらと軽薄な笑いを浮かべていた。
「いや、申し訳ないけどボクに決定権ないんだよね。キミの言ってることはすごーく魅力的。でも、ここへ乗り込んできた魔術師もどきは一掃しろ、とのことだからさ、悪く思わないでよ」
その言葉に、小春は眉を寄せる。
「もどき……?」
「おっと」
口を滑らせたのか、彼は黙り込んでしまう。
それについて説明する気はないらしい。
「う……」
冬真の荒い呼吸に血が絡んで、銃創からぼたぼたととめどなく血が垂れていった。
日菜はとっさに駆け寄って両手をかざす。
彼がどんな人間であっても関係ない。何事も命あってこそだ。
「近寄るな……」
けれど、冬真はにべもなく拒絶した。
この状況における、なけなしのプライドだった。
「強がっちゃって。ホントは痛くて苦しくてたまんないくせにー」
「どうして……僕を裏切る?」
ふいに祈祷師の顔から笑みが消えた。



