「やっほー、さっきぶりだね!」
「瑠奈、どうしたの?」
「小春ちゃんたち、このあと何するか決まってる? もしよかったら、奏汰くんも誘ってどっか遊びにいかない?」
思いもよらぬ誘いだった。
蓮はつい眉を寄せる。
「そんな場合かよ」
「でも、何もしてないと落ち着かないでしょ? それに、明日にはどうなるか分かんない。最後なんだよ」
そのひとことの重みを図らずも実感させられる。
「紗夜ちゃんには断られちゃった。たくさん食べて備えなきゃ、って。日菜ちゃんは最後かもしれないからこそいつも通りでいたい、って言うし。冬真くんはあれだし……」
ここのところ色々なことが立て続けに起こって、多くの死に触れた。
明日はさらに過酷なものになるだろう。
だからこそ思い詰めないように、という瑠奈なりの気遣いに気づいた小春は顔を綻ばせる。
「そうだね。久しぶりに遊びにいこう」
────奏汰と合流すると、4人は大通りを歩いていく。
「どこ行く?」
「俺、腹減ったー」
「じゃあとりあえず腹ごしらえからね。近いしバーガーショップでいっか」
「早くしなきゃ時間なくなっちゃう!」
他愛もない話をしながら昼食をとると、瑠奈の希望でテーマパークに向かった。
────塞ぎ込むような日々から抜け出して、幻想の世界に飛び込むと、足取りは嘘みたいに軽やかになった。
疾走するコースターに飛び乗ったり、きらきら輝くメリーゴーラウンドに揺られたり、特別な場所が不思議と“当たり前”を取り戻してくれる。
気づけば、笑顔がこぼれていた。
あっという間に日が傾いて、最初で最後のかけがえのない思い出と名残惜しさを抱えたままゲートを潜る。
「あー、楽しかった! 最高だったなぁ」
「いい気分転換になったよね」
「……ったく。はしゃぎすぎだろ、おまえら」
「そう言う蓮が一番はしゃいでたじゃん」
「うるせ」
慌てる蓮に思わず笑う。
余韻に酔いしれるほど、少し寂しくなってしまう。
駅に着いて帰りの切符を買おうとしたとき、ふいに彼が足を止める。
「どうかしたの?」
「……なあ。海、行かね?」
────飛び乗った電車の窓から水平線が見え始めると、瑠奈が「わあ!」と声を上げる。
沈みかけた夕日が、あたり一面をあたたかいオレンジ色に染め上げていく。
金糸でふちどったような雲の隙間から、柔らかい光が射し込んだ水面は煌めいていた。
紫がかったグラデーションの空の下、駅舎から出た4人は海辺へ歩いていく。
寄せては返す波の音を耳に浜辺へ下りると、靴裏で細かな砂粒を弾いた。
ふと、奏汰は瑠奈の肩を叩く。
いち早くその意図を察した瑠奈はにんまりと笑った。
「ねぇ、ふたりとも。あたしたち、ちょっと売店の方行ってくるね」
「えっ? あ、うん。分かった」
ふいにふたりきりになって、またくすぐったいような空気に包まれる。
意識しているのだと自覚する。お互いに。
それでも、と、蓮は小春の手を取って握った。
長く一緒にいるけれど、手を繋いだのは当然初めてのことだ。
だけど、もっと意識して欲しいから。



