自分たちを信じて逝った仲間たち、そしてこんな狂ったゲームなんかの犠牲となったほかの魔術師たち、みんなのため。
そして、何より自分たちのためにも。
「決行はなるべく急いだ方がいい……」
念を押すように言った紗夜に小春は頷く。
勘違いしてはいけないのは、12月4日に何かが起こるのではなく、すべてが終わるのだということ。
運営側への逆襲という大それた目的を遂げるにしても、なす術なく全滅するにしても、その日はリミットなのだ。
「明日にしよう」
平穏は終わる。
もう命も安全も担保されない。
ても、それは所詮、鳥かごの中の平穏だ。
(わたしたちは抗う────)
何があっても、最後まで絶対に諦めない。
小春と蓮を残して、紅の家を出たそれぞれは帰路についた。
それを見送ったものの、はたと蓮は玄関のドアを押し開ける。
外廊下を歩いていくその背中を呼び止めた。
「奏汰」
◇
風に揺れるレースのカーテンの向こうに小春はいた。
ベランダから街を見下ろす後ろ姿は脆く見えて、蓮は何も言わずに隣に並ぶ。
「わたし……これでよかったのかな」
その横顔はもっと感傷的に見えた。
先の見えない恐怖は、次々に身近な人を失う現実は、底知れない不安を煽る。
「間違ってなかったかな。みんなを苦しめてないかな。……守れるのかな?」
固く口を結んだ蓮は、手すりに置かれていた彼女の手にそっと左手を重ねた。
上から優しく握る。
「大丈夫だ、これでいい。間違ってないし、誰も苦しめてない。ひとりで気負うな、みんなが互いを守り合うんだよ」
ひとつひとつの問いに丁寧に答えた。
不安なのは自分も同じだ。
失う苦しみを味わった分、また守れなかったらと思うと怖くて気が狂いそうになる。
だけど、もうひとりじゃない。
道はひらけている。
あとは、信じて進むしかない。
「蓮……」
揺れる瞳を見つめて頷いてみせた蓮は、それから意識的に深く呼吸する。
一拍置いて切り出した。
「伝えたいことがある」
そう言った瞬間、鼓動が速まった。
指先が痺れるように熱を帯びる。
「ぜんぶ終わったら話す。……だから絶対、死なないでくれ。生き延びて聞いて欲しい」
儚げで照れくさそうでもあるその表情を認め、小春は小さく頷いた。
「……分かった」
いつにない様子に少し戸惑うものの、まるきり想像がつかないわけでもない。
くすぐったいような沈黙の時間が訪れたそのとき、ふいにインターホンが鳴った。
ふたりして顔を見合わせる。
ドアを開けると、そこにいたのは瑠奈だった。



