大雅の話を聞き終え、蓮は思わず一歩踏み出す。その勢いのまま、彼の両肩を掴んだ。

「頼む。小春と会って、記憶を転送してくれ。あいつの記憶を取り戻してやってくれ」

 当然、言われなくてもそうするつもりだ。

「おう」

 大雅は短く答え頷く。

 それから「ただし」と、蓮の目を見据える。

「また明日な。今日は小春も疲れてるだろうし、俺たちにも色々あり過ぎた」

 例えば人物相関図が存在するのなら、それが大きく動いたことだろう。

 小春に関する大方の謎や秘密も明かされ、あとは答え合わせを残すのみとなった。

 頭の中を整理したいし、紅たちとももう少し情報を共有しておきたい。

 今日のところは、焦る必要などないだろう。

「……ありがとう」

 噛み締めるように告げた蓮に、大雅は頷く。

 彼の切実な想いは、テレパシーなど使わずともひしひしと伝わってくる。

「ああ、大丈夫だ」

 ────実のところ昨晩から、小春とのテレパシーに変化が見られている。

 微弱な電波のようではあるが、時折意識を繋ぐことが出来るのだ。

 それは、彼女の記憶を巡る希望と言えるだろう。