学校へ着くと、小春と蓮は思わず緊張感を滲ませた。

 和泉を殺害した魔術師への警戒を強める。

「さすがに昼日中の学校で襲われるってことはないよね?」

「たぶんな。でもあんまり一人になるなよ」

「うん、分かった……」



 ────その後、無事に六限まで授業を終えると、すっかり気が抜けてしまった。

 結局、特別変わった出来事もなく、当然ながら魔術師に襲われるということもなかった。

「良かった、何事もなくて」

 昨日と同様、蓮とともに掃除をしながら小春は呟く。

「帰るまでは油断出来ねぇぞ」

 むしろ放課後こそ、向こうにとっては好都合な狙い目の時間帯だろう。

 人も疎らになり、教師も干渉してこない。周囲の目はほとんど逸れることになる。

「つか、明日もそれ以降も気抜くなよ?」

「あ、そうだよね。気を付けなきゃ」

 今日を乗り越えたら万事問題なし、というわけではないのだ。小春は気を引き締めた。

 掃除を終え、箒を用具入れへと戻す。

 鞄を手に取り帰ろうとしたタイミングで、サッカー部員たちが現れた。

「いた、蓮。ごめん、ちょっと来てくんない?」

「え? 何でだよ」

「ちょっと部でトラブル。頼む!」

 蓮の返事を待たずして、部員たちは引っ張って行く。

「悪ぃ、小春。ちょっと待っててくれ」

「あ、うん!」

 小春はただ見送ることしか出来ず、放課後の教室に一人残された。



 静寂が訪れ、小さく息をつく。少し肌寒い。

 蓮を待つ間の暇を潰すため、外でも眺めようと小春は窓に寄った。

「……あれ、小春ちゃん?」

 突如として声を掛けられ、小春は振り返る。

 教室の扉のところに瑠奈が立っていた。

「何してるのー? 蓮くんの姿もないみたいだけど」

「蓮は部の人に連れて行かれて……。戻ってくるの待ってるんだ」

「そうなんだ」

 相槌を打った瑠奈は楽しげな笑いをこぼす。

「小春ちゃんも蓮くんと帰りたいんじゃん。相思相愛だね」

「だ、だから違うってば!」

 蓮と帰りたいのは、瑠奈が想像しているような理由からではない。

 ゲームの、そして和泉を殺めた犯人のせいだ。

「瑠奈は何してるの?」

 何かと小春と蓮の仲を疑ってくる瑠奈のからかいは、正直なところ面倒である。

 小春は話を逸らそうと尋ねた。