◇
「……は、あれ? あいつら、どこに消えた!? どうやって!?」
アリスは慌てて周囲を見回した。
冬真も困惑したように視線を散らす。
突如として、彼らは忽然と姿を消した。
大雅と律を取り逃したときと同じ状況だった。
「……時間が止まってたのか」
「マジか、そういうこと……。あの中に如月の狙いの魔術師がおったんや。十中八九、あの新顔やろな」
冬真は目を細め、草木の壁を見た。
どのくらい時間が止まっていたのかは分からないものの、まだ煙が立っている。
「まだ近くにいるかも」
「……それやとええけど、そうとも限らんのちゃうかなー」
草木の壁に空いた穴をくぐり抜けるも、既にどこにも人の気配はない。
アリスは大げさにため息をつく。
「これは逃げられたっぽいで。もし反動で意図せず時間が動き出してまったんやとしても、向こうには水無瀬がおるし」
「……そうだね。時間の無駄みたい」
別にこの機を逸しても、彼らを追い詰めるのは難しくない。
◇
「……行ったか?」
誰にともなく蓮が尋ねる。
冬真とアリスが引き揚げていったのを確かめると、小春は光学迷彩の結界を解いた。
「危なかったぁ。ナイス判断だったね」
瑠奈はほっと息をつく。
一度隠れてやり過ごす判断をして正解だったみたいだ。
青い顔で蹲っていた紅も口元の血を拭い、呼吸を落ち着ける。
おもむろに腕時計を確かめ、眉を寄せた。
ふと、大雅が「小春」と呼びかける。
「俺の目、見ろ」
困惑するも、言われるがままにその目を見返した。
大雅の真剣な眼差しと、小春の戸惑うような眼差しが3秒間交わる。
「あ……」
「……解けたな」
小春が呟くように声をこぼすと、彼は息をついた。
これで冬真の絶対服従は解除できた。
「なあ、記憶は────」
「ちょっと待て。この辺はまだ安心できない。廃トンネルもアリスにバレてる以上、もう安全とは言えねぇ」
また、至の死によって瑚太郎も目覚めたはずだ。
彼が裏人格なら、再びトンネルに現れて奏汰に襲いかかりかねない。
「奏汰、何ともねぇか?」
大雅はテレパシーで呼びかける。
『うん、いまのところ大丈夫。異変なしだよ』
「そっか。じゃ、場所移して合流するぞ。河川敷に来てくれ」
河川敷に着くと、先に来ていた奏汰が歩み寄ってくる。
それぞれの顔を窺い、周囲を見回す。
「八雲くんは?」
「……間に合わなかった」
苦しげに紡がれた答えにはっとして目を伏せた。
瑠奈が不安気な表情で小春を見つめる。
「ねぇ……。あれはどういう意味だったの?」
何を聞きたいのかは明白だった。
小春が至を殺した、というアリスの言葉のことだ。
「……あの────」
小春は眉を下げて泣きそうな顔で俯いた。
「……は、あれ? あいつら、どこに消えた!? どうやって!?」
アリスは慌てて周囲を見回した。
冬真も困惑したように視線を散らす。
突如として、彼らは忽然と姿を消した。
大雅と律を取り逃したときと同じ状況だった。
「……時間が止まってたのか」
「マジか、そういうこと……。あの中に如月の狙いの魔術師がおったんや。十中八九、あの新顔やろな」
冬真は目を細め、草木の壁を見た。
どのくらい時間が止まっていたのかは分からないものの、まだ煙が立っている。
「まだ近くにいるかも」
「……それやとええけど、そうとも限らんのちゃうかなー」
草木の壁に空いた穴をくぐり抜けるも、既にどこにも人の気配はない。
アリスは大げさにため息をつく。
「これは逃げられたっぽいで。もし反動で意図せず時間が動き出してまったんやとしても、向こうには水無瀬がおるし」
「……そうだね。時間の無駄みたい」
別にこの機を逸しても、彼らを追い詰めるのは難しくない。
◇
「……行ったか?」
誰にともなく蓮が尋ねる。
冬真とアリスが引き揚げていったのを確かめると、小春は光学迷彩の結界を解いた。
「危なかったぁ。ナイス判断だったね」
瑠奈はほっと息をつく。
一度隠れてやり過ごす判断をして正解だったみたいだ。
青い顔で蹲っていた紅も口元の血を拭い、呼吸を落ち着ける。
おもむろに腕時計を確かめ、眉を寄せた。
ふと、大雅が「小春」と呼びかける。
「俺の目、見ろ」
困惑するも、言われるがままにその目を見返した。
大雅の真剣な眼差しと、小春の戸惑うような眼差しが3秒間交わる。
「あ……」
「……解けたな」
小春が呟くように声をこぼすと、彼は息をついた。
これで冬真の絶対服従は解除できた。
「なあ、記憶は────」
「ちょっと待て。この辺はまだ安心できない。廃トンネルもアリスにバレてる以上、もう安全とは言えねぇ」
また、至の死によって瑚太郎も目覚めたはずだ。
彼が裏人格なら、再びトンネルに現れて奏汰に襲いかかりかねない。
「奏汰、何ともねぇか?」
大雅はテレパシーで呼びかける。
『うん、いまのところ大丈夫。異変なしだよ』
「そっか。じゃ、場所移して合流するぞ。河川敷に来てくれ」
河川敷に着くと、先に来ていた奏汰が歩み寄ってくる。
それぞれの顔を窺い、周囲を見回す。
「八雲くんは?」
「……間に合わなかった」
苦しげに紡がれた答えにはっとして目を伏せた。
瑠奈が不安気な表情で小春を見つめる。
「ねぇ……。あれはどういう意味だったの?」
何を聞きたいのかは明白だった。
小春が至を殺した、というアリスの言葉のことだ。
「……あの────」
小春は眉を下げて泣きそうな顔で俯いた。



