騒ぎを聞きつけた生徒たちが、開けた窓から下を眺めていたため、石像を落とした犯人が誰なのかまでは分からなかった。

 しかし、小春は見た。

 一瞬だったが、なびく髪が屋上に(、、、)消えたのだ。

 恐らく犯人だろう。

 和泉を殺めた、石化魔法の持ち主。そして今、和泉の頭部を落とした人物。

「蓮……」

 小春は屋上を見上げたまま、硬い声で呼び掛ける。

「どうしよう。私たちの話、犯人に聞かれたかも」

 屋上に出て、最初に蓮が確認したときは、確かに誰もいなかった。

 しかし、今犯人らしき人物が屋上にいたことを考えると、何とも言えない。

「マジかよ……」

 蓮が引きつった表情を浮かべたとき、教師が駆け付けてきた。
 
「彼が……二年E組の生徒というのは本当か?」

 動揺を顕にしながら石像を指し、誰にともなく尋ねる教師。ざわめきが一時的に凪ぐ。

 いち早く首肯したのは蓮だった。

「はい。和泉すよ」

 その名にピンと来たらしい教師は、集まっていた生徒たちに教室へ戻るよう素早く指示する。

 途中、小春たちは屋上へ寄ってみたが、そこには誰の姿もなかった。



 程なくして通報を受けた警察が駆け付け、午後からは休校となった。

 小春と蓮は帰路につく。

「誰だったんだろう、あれ……」

 小春は呟く。

 屋上に見えた犯人らしき人物のことだ。

「髪が見えたってことは女子か? ……っても、そんなの手掛かりにもならねぇな」

 校内に何人の女子生徒がいるのかという話である。

 もし、本当に犯人が小春と蓮の会話を聞いていたとすると、近いうちに接触してくるはずだ。

 あのように和泉を手に掛けたところを見ると、殺意は高く、ゲームに積極的である。油断ならない。

 小春の家の門前に着くと、二人は足を止める。