中学の頃からサッカー部のレギュラーだったが、高校でも活躍しているという話をよく聞いていた。

 しかし、ここに来て突然の休部────部員や顧問は勿論、小春にとっても衝撃的な出来事だった。

 理由を尋ねても大概はぐらかされるだけで、誰も真意を聞くことは出来ていない。蓮のみぞ知るところとなっている。

 蓮が部活に行かなくなったタイミングから小春と毎日一緒に登下校するようになったわけだが、蓮と歩くたび、小春はいつも釈然としない気持ちを拭えずにいた。

 部員との不和は見受けられないが、本当にどうしてしまったのだろう。

 何があったのだろう。
 聞いても良いのだろうか。
 
(また、はぐらかされて終わるかな? 困らせてしまうだけかな……)

「そっか、待ってるからな。じゃあな」

「おう、悪ぃ。サンキュ」

「……あ、そうだ」

 深追いすることなく、部活に関する話題を潔く切り上げた部員たちだったが、はたと何かを思い付いたように口を開く。

和泉(いずみ)のこと見てない?」

 和泉と言えば、E組の男子生徒である。小春は、和泉とは去年同じクラスだった。

 明るい性格で男女問わず多くの友人がいたことを思い出す。

 二年に進級すると、小春はB組、和泉はE組とクラスこそ離れたものの、たまに廊下ですれ違えば軽く会話を交わすことはあった。

 和泉と同様に交友関係の広い蓮は、同じクラスになったことこそないが、横の繋がりを経てそれなりに親しくしていた。

「和泉? 見てないけど、何で?」

 蓮は不思議そうな表情で聞き返した。

 部員たちに問うような眼差しを寄越された小春も、ふるふると首を横に振る。

 今日は会っていない。朝から見かけてもいない。

「そっか。いや、今日あいつ無断欠席でさ。何か担任が言うには、昨日から帰ってないらしくて……連絡もつかないって」

 部員の一人が案ずるように眉を下げ言った。

 和泉はムードメーカー的な性格だが真面目でもあり、無断欠席や家出などとは結び付かない。

 小春は思い返してみたが、昨年もそのようなことは一度もなかった。

「……何か、変わった様子とかなかったか?」

 不穏な気配を察してか、蓮の声が硬くなる。部員は「うーん」と記憶を辿った。

「そういや、二週間くらい前から何かよくスマホ見てたな」

「何してた?」

「何か見てた……何かまでは分かんないけど。聞いても“何でもない”の一点張りで。でも一回だけ言ってたな」

「何て……?」

 蓮が尋ねると、部員は顔を上げる。

「ゲームがどう、とか────。あんまり詳しくは覚えないけど」