驚きを顕にする奏汰と瑚太郎。そういう可能性も確かにあった。

 大雅は首肯する。まさに言わんとすることだった。

「でも、だとしたら腑に落ちねぇのはやっぱり、連絡を絶ってることだよな。……まさか、至に眠らされてんのか?」

 大雅は思案顔で憶測を口にする。

 ありえない話ではなかった。むしろ、それなら合点がいくような────。

「なら、八雲くんは敵なのかな。仲間になってくれたら心強いと思ったのに」

 奏汰の呟きには各々同感だったが、何とも言えない。至の行動は、腹の底が読めない。

「……けど、ちょっと安心した。よかった、眠らされてるだけなら生きてるよな」

 蓮は安堵の息をつきつつ言った。

 まだ、小春の失踪が至の仕業であると確定したわけではないし、祈祷師の所業である可能性が捨て切れたわけでもない。

 それでも、そう思う。

 至の意図は知れないが、ただ眠らされているだけなら、祈祷師に襲われたのでないなら、希望を持っていられる。

 ……無論、心配には変わりないが。

「蓮」

 大雅が硬い声で呼んだ。

「至を見つけたらどうする気だ? もし、あいつが悪意ある人間で、本当に小春を眠らせてたとしたら。……殺すのか?」

 自衛の手段として“殺し”の受容を提案したのは大雅自身だった。

 しかし、やはりそれが正しいとは思えなくなっていた。

 運営側を否定するくせに、彼らが強いたルールだけは尊重するなど虫が良すぎる。

 小春に倣い、その信念を貫くべきだろう。

 ……蓮は、他の皆は、どうなのだろう?

 あのときは賛同してくれたが、今は────。

「……いや、殺さねぇ。ちょっと、冷静になれた。小春の言葉、俺が破るわけにいかねぇよ」

 ややあって蓮は言った。

 その返答に、大雅は口端をわずかに持ち上げる。奏汰も瑚太郎も同じような反応で、同調するように頷いた。

「こうなったらやることは一つ。八雲至を見つけ出す。そうすれば、自ずと小春も見つかるはず」

 小春の生存という可能性、そのビジョンが何となく明瞭になった。

 目的も見失って渇き切った日常が潤いを取り戻していくのが分かる。それこそ生きる活力なのだろう。

「それで……出来るなら、至は仲間に引き入れたい。その仲間も一緒に」

 大雅が言う。

 現状、至がどちら側(、、、、)なのか分からないが、冬真を眠らせ自分を助けてくれたことから、望みはあると思っていた。

 奏汰が「そうだね」と同意する。大雅の主張に関して、誰も異議はない。

「……っし、改めて良いか」

 蓮は立ち上がり、各々と目を見交わす。

「お前らも約束してくれ。誰も殺したり、傷つけたりしない。いいな?」