相も変わらず、小春へのメッセージは未読で、当然電話にも出ない。家にも帰っていなければ、学校にも来ていなかった。

 最後に蓮が小春といた踏切にもやはり姿はなく、電車に遮られていたとはいえ本当に忽然と消えてしまった。

 朝から学校そっちのけで小春の捜索に勤しんでいた蓮とそれを手伝っていた奏汰、瑚太郎は、午後を回ったタイミングで休憩を取ることにした。

 学校近くの公園へ立ち寄り、ベンチに腰掛けた蓮は深く息をついた。

 週末もあちこち捜し回ったが、手がかりはなかった。

「……あれから数日経ってるし、難航して当然だよ」

 蓮のやるせない思いを察し、瑚太郎が励ますように言う。奏汰も続いた。

「小春ちゃんより先に失踪してる胡桃沢さんも安否不明だけど、遺体は上がってない。“失踪”っていうパターンを辿ってるなら、希望はあるはず」

 二人の言葉を受け、蓮は神妙な面持ちで頷く。

「そうだよな。祈祷師に殺られた琴音は……消えたりしなかったし」

 消えたと言えば消えたが、それは死亡が確定してからだ。

 ────祈祷師は既に魔術師たちの前に姿を現している。今さら姿を隠す必要はないし、殺す気ならその場で殺るはずだ。その痕跡を消して隠匿する必要などない。

 小春が消える必然性などない。

(ん? 消える(、、、)……?)

 蓮はふと何かを思いついたように眉を寄せる。

 そのとき、じゃり、と砂を踏み締めるような音がしたかと思えば、大雅が姿を現した。

「……あ、見っけ。進捗は?」

 いつものようにポケットに両手を突っ込みながら、歩み寄ってきて尋ねる。奏汰が首を横に振った。

「小春ちゃんの方は今のところ手がかりなし。八雲くんもまだ……」

「そっか」

 大雅は短く答え、ブランコを囲む鉄の柵に座る。

 真剣な表情で少し口を噤んでいたが、やがて切り出した。

「あのさ、そもそもなんだけど────小春が消えたの、祈祷師の仕業じゃねぇんじゃねーかなって」

 奏汰と瑚太郎は訝しむように首を傾げる。一方の蓮は、ぱっと顔を擡げた。

「俺も……俺も、思った。“瞬間移動させられたんだ”って思い込んでたから、つい祈祷師と結び付けちまってたけど」

 蓮は一度言葉を切る。希望を過信し過ぎないよう、自分自身を落ち着ける。

 ただの希望的観測だ。願望だ。それでも、妥当性はある────。

 再び口を開いた。

「消えた、ってことはさ……至の仲間の魔術師の仕業じゃねぇか?」