「時間をくれ」

 一朝一夕で決められる問題ではなかった。

 ここまで漫然とゲームの中で生きてきた。しかし、大雅の提案に対する答えは、その選択は、否が応でも能動的になることを強いてくる。

 冬真との関係性も試されることになる。それは、これまでの自分の行動に対する価値を意味付けるような気がした。

「どうせ如月が目覚めるまで何も出来ない。少なくともそれまでは、お前らに手出ししないと約束する」

「ああ、分かった」

 大雅は潔く了承し、立ち上がる。

 慌てる必要はない。急かすことも強いることもするべきではない。決めるのは律だ。

「如月とあの遺体の始末は任せておけ」

「頼む。……じゃあな」



 大雅は屋上を後にした。

 冬真のこと、律のこと、そして至のこと────今夜の色濃い出来事を、蓮たちにテレパシーで伝えておこうと、顳顬に人差し指を添える。

 歩を進め、角を曲がった。

「……お前、百合園うららの協力者だな?」

 聞き慣れない女子の声がした。何処か恨みの込もったような低い声色だ。

 咄嗟に振り向くと同時に頭に衝撃が落ちてきた。

 相手の姿も捉えられず、何が起きたのかすら分からないまま、視界が暗転する。

 鈍器で殴打された大雅は意識を失い、どさりとその場に倒れた。