瑠奈と帰路についた小春は、蓮にその旨を伝えるべくメッセージを送っておいた。
返信を待たずにスマホをしまう。
瑠奈の行きたがる店へ行くには、一度バスに乗らなければならなかった。
他愛もない話をしながらバス停への道を歩く途中、ふと小春は訝しんだ。
道がちがう。
バス停に続く道とは別のところで曲がった瑠奈の腕を掴んで引き止めた。
「瑠奈、こっちじゃないよ」
「近道なの」
あっけらかんとしたその答えにさらに違和感が募った。
この道はバス停とは反対の方向に続いているはずだ。
「どうかしたの? 早く行こ」
「……あ、うん」
彼女について歩いていくと、住宅街を抜けて土手に出た。
緩やかな風が吹き、草がなびく。川の水面はさざめいていた。
……やはり、バス停に近づいている気配は感じられない。
小春が再び口を開こうとしたとき、ふいに瑠奈が足を止めた。
「小春ちゃん」
普段よりもいくらか低い声で呼びかけた瑠奈は、振り向いて小春を見据えた。
す、とスマホを掲げられ、はっとする。
メッセージアプリが立ち上げられた画面には、小春と和泉のトーク履歴が表示されていた。
小春からのメッセージは左側────つまり、これは和泉のスマホだ。
「それ、どうして瑠奈が……」
小春は混乱した。声が震える。
信じがたいけれど、どう解釈してもたどり着く結論はひとつだ。
和泉のスマホを持っているということは、瑠奈が和泉を────。
「あたしね、魔法少女なんだ」
唇の端を持ち上げ、彼女は堂々と言ってのけた。
何やら鞄から取り出す。
「これ、魔法のステッキなの。かわいいでしょ?」
細い棒の先端部分には三日月やハート、羽根の装飾がなされ、リボンまで巻かれている。
小春は戸惑った。
瑠奈の言う“魔法少女”が魔術師という意味だとして、ステッキとは何のことだろう。
「見ててね。これをひと振りするだけで……」



