それに負けて眠ってしまうと、眠らせた相手が目覚めてしまうわけである。
反動で眠った術者は30分が経過すると、自然に目覚める。
それまでは自力でも他力でも目覚められなかった。
そして、眠らせている人数が多いほど、術者への眠気の反動が大きい。
「……そういうことか」
至は反動に耐えきれず眠ってしまい、それによって冬真が目覚めたのだ。
昨日の様子にも頷ける。
祈祷師を眠らせたせいで、受ける反動が倍以上になった。
何度もあくびをしていたのはそのためだ。
彼は終始、猛烈な睡魔と戦っていたのだろう。
────昼休みには、2、3年の精査を終えた。
『旧校舎に来て』
それに応じて向かうと、一角に冬真と律がいた。
雑然としていて寒々しい旧校舎は、依然としてひとけがない。
冬真は既に律を傀儡にしていたため、彼を介して話す。
「どうだった? 2、3年の魔術師は」
「2年はひとり……早坂瑚太郎」
もともとはもっと人数がいたはずだ。生きていれば陽斗もそうだった。
期日に近づくにつれて、魔術師はどんどん減っているのだろう。
瑚太郎のことは隠し通すことができないため、正直に告げた。
冬真はヨルの存在も正体も知っているからだ。
「3年は────おまえ含めてふたりだ」
大雅は慎重に言った。
冬真の眉がぴくりと動く。吟味するかのような反応だった。
「もうひとりは4組の三葉日菜」
彼女のことは、明かしても日菜自身に悪影響や実害はないと判断した。
「ふたりだけか」
大雅は「ああ」と真剣な声音で頷く。
「……そう。それで、彼女の異能は?」
「回復魔法」
「回復ね……それもまた便利だな。どんな怪我でも治せるの?」
「怪我ならな。病気治すとか生き返らせるとかは無理」
「死者蘇生は不可能か。ま、そんな能力があったらさすがにチートだよね」
頷いた冬真は一拍置くと、柔らかい眼差しを唐突に鋭くした。
「……で、3年の魔術師は本当に僕含めてふたりだけか?」
やけにしつこい念押しだった。
大雅は警戒しつつも、特別反応しないよう心がける。
「……ああ」
「────そっか、残念だな。きみはまた嘘をつくんだ」
思わぬ言葉だった。大雅は弾かれたように顔を上げて眉を寄せる。
なぜ分かったのだろう。
「知ってるんだよね、僕。3年の魔術師はぜんぶで3人だってこと。いま分かったよ。きみが嘘ついたってことは……もうひとりはきみの仲間だな?」
「……!」
「そんでもって、僕に隠さないといけない理由がある。ここまで来ればばかでも分かるよ。そいつこそが、硬直魔法の魔術師ってことだろ?」
彼の言う通りだった。
それでも、大雅は動揺を必死で押し込めた。認めたら終わりだ。
「……ちがう、ふたりだって言ってんだろ。3人? んなこと何でおまえが知ってんだよ」
「“彼”に聞いたんだよ。ほら、半狐面の彼。知ってるよね?」



