窓から朝日が射し込んでいた。
乾いた光の中、舞う埃がきらきらと煌めく。
はっと目を覚ました小春は、弾かれたようにソファーから起き上がる。
見慣れない風景に戸惑った。ここはどこだろう。
「……!」
ふと、向かい側の壁にもたれかかって座る男子高校生が目に入った。
俯くようにして目を閉じている。
「あの……」
思わず声をかけた。
遠慮がちに揺すってみるも、完全に意識がなく目覚める気配もない。
ひたすらに戸惑って困惑した。
どうしたものだろう。どうすればいいのだろう。
何も分からない。
(怖い……)
身を縮めたそのときだった。
ふいに、かた、と物音がした。びくりと肩が跳ねる。
「あれ……? あたし……」
部屋の片隅で眠っていたアリスが目を覚ました。
衰弱したように疲れきったその顔に、不可解そうな表情が浮かぶ。
「八雲に眠らされてたんか? 何で急に目が覚めて……」
ふと、顔を上げると小春と目が合う。
「あの、大丈夫……?」
「あ、あんた……! 何でここにおんの!?」
驚愕したアリスは勢いよく立ち上がった。
あれほど蓮たちが必死で捜していたというのに、当たり前のようにここで何をしているのだろう。
てっきり、もう死んだものだとばかり思っていた。
「……?」
首を傾げる彼女を見やり、アリスはとっさに「ああ……」と取り繕う。
小春の眼差しは苦手だ。
広く澄み渡っていて、責められている気分になる。
「八雲至……。ある意味、あたしの天敵やな」
「どういう……?」
「あたしはな、眠ると必ず悪夢を見るんや。ガチャの代償で」
「えっと、よく分かんないけど……あの彼が八雲至くん? で、あなたを眠らせた?」
不思議そうな顔をする小春だけれど、それよりもさらに意味が分からないのはアリスの方だった。
「なに言うてるん? あたしが最初にここに来たとき、八雲があたしを眠らせたとこ見とったやろ? 確かに影があった。すぐそばにおったやん」
「え……?」
まるで理解できないようだった。
アリスの胸の内で違和感が膨らんでいく。
「何や……どないなってんねん。あんたが説明してや。何でここにおんねん。向井の奴が死ぬほど心配して捜しとるのに連絡もせんと……」
蓮の名前を出しても、彼女の様子は変わらなかった。
本当に、何がどうなっているのだろう。
「あんた、水無瀬小春……やんな?」
確かめるように尋ねると、小春は「水無瀬、小春……」と繰り返した。
まるで初めて耳にしたかのような反応だ。
「なあ、まさかあたしのこと覚えてへん? 仲間やったやんか!」
「ごめんなさい。何の話か、全然……」
「は……な、何があったん……。あんたが消えてから、何が────」
「……う、ん……」
ふいに至が小さく呻き、目を覚ました。
自身が眠ってしまったことに気づくと、珍しく狼狽したようで瞳を揺らがせる。
ふと、その目がアリスを捉えた。



