紗夜は毅然と続ける。
「呪術師の正体は運営側だった。祈祷師もその一員で、ほかにあとふたりいる。霊媒師と陰陽師……甲斐陽斗を殺したのは霊媒師だった。そして陰陽師というのが、運営側のリーダーだって……」
衝撃的な事実にそれぞれが息をのんだ。
しかし、呪術師はなぜそんな情報を与えたのだろう。
「よく聞き出せたな。そんな核心に迫るようなこと」
「危うく死ぬところでしたけれど」
うららは肩をすくめる。実際、死んでいてもおかしくなかった。
日菜がいなければ、間違いなく紗夜ともども命を落としていた。
「実は俺たちもな、祈祷師に襲われたんだ。それを至とその仲間の“影の魔術師”が助けてくれた」
結局、さらなる謎を残して消えてしまったのだが。
「どう捜すかなぁ……」
もう一度会いたいところだけれど、いったいどうしたものか。
今日の邂逅も偶然で、運がよかっただけだ。
「それについては朗報がありますわよ。三葉さんが色々教えてくれたし、架け橋になってくれますわ」
うららが得意気に言った。
「そいつ、信用できんの?」
「日菜自身は大人しくて献身的な性格だったし、面倒ごとには発展しなそうだけど……」
懐疑的な大雅に紗夜はそう返す。
さすがに手の内をすべて明かすことはなかったけれど、敵意はないように見えた。
だからこそ紗夜たちの命を救ってくれたのだろう。
「で、何を聞いたんだよ?」
至に通ずる情報ということは、すなわち小春にも繋がるのではないか。
そう考えた蓮の気持ちが急く。
「八雲さんたちの一味は3人────八雲さんと“影の魔術師”と三葉さん。ただし厳密には少しちがって、八雲さんはあくまでニュートラルな立場だそうですわ」
「ニュートラル?」
「つまり、場合によっては敵にもなるし、何ならいまも全面的に味方ってわけじゃないということ……」
正確には、日菜と“影の魔術師”は仲間なのだが、至は行動をともにしているだけなのだそうだ。
“3”というより“2プラス1”ということだ。
そして、そんな至のスタンスは自分たちにも、ほかの誰にでも同じことが言える。
救ってくれたのはたまたまで、別に蓮たちに味方しているわけではないのだ。
「その“影の魔術師”が……小春?」
蓮は誰にともなく尋ねる。
その声は期待と不安を孕んで細くなった。
「でも、小春にそんな異能は────」
「あのとき聞こえたのは確かに小春の声だったんだよ。至も言ってただろ、小春は仲間だって」
彼らが3人でいるのなら、消去法でも自ずと“影の魔術師”イコール小春ということになる。
「けど、小春じゃないとも言ってた」
「…………」
蓮も反論を失った。
至のその言葉は意味が分からずじまいだ。



