聞きたいことも知りたいことも山ほどある。
このまま別れたら、次にいつ会えるか分からない。
焦燥に心を逆撫でられた蓮は唇を噛み締める。
視界が戻った頃には、影はどちらも消えてなくなっていた。
廃トンネルに戻ると、すっかり日が落ちていた。
人格の交代を余儀なくされる瑚太郎は、日没前に先に帰宅した。
「……小春の声がした」
あのとき、彼女らしき声を聞いたのは蓮だけだった。
けれど、気のせいなんかじゃない。願望から来る幻聴でもない。
至本人が小春と行動をともにしていることを認めたのだ。
あの場にいた、見えない魔術師が小春である可能性は大いにある。
「蓮。もしあの“影の魔術師”が本当に小春ちゃんだったとしても心配いらないよ。でしょ?」
奏汰に言われ、思い返した。
彼女は至の身を案じていた。
少なくとも、脅されて従っているとか、無理やり協力しているといったような状況ではないのだろう。
「……そうだな」
「それ以前に、そもそも小春じゃないかもしれねぇよな。俺らと再会して無反応なんて変だし、能力だってちがう」
大雅の言葉に深く息をついた。
憂いも期待もほどほどにしておかないと、とても身が持たない。
「八雲くんに会えたはいいけど謎が増えたよね。彼の言ってたこと、ほとんど意味分かんない状態で」
去り際、急に様子がおかしくなったのもどうしたのだろう。
「────なあ、うららたちのことなんだけど」
ふと、大雅は切り出した。
「紗夜もうららもテレパシーに反応がない。それと、アリスも……切断された」
「マジ?」
少なくともアリスに関しては、テレパシーの途切れ方が死んだときのそれとは異なっていた。
けれど、いまの状況は分からない。生死も。
『────桐生』
ふいに紗夜からテレパシーが繋がれた。
大雅はもたれかかっていた身体を起こす。
「おまえら、無事なのか?」
『何とかね……うららも。いまトンネルに向かってる。合流したら詳しく話す……』
────それから、5分と経たずにふたりが現れた。
“何とか”と答えた割には、彼女たちの身に怪我や傷はひとつも見当たらない。
「何があったんだ?」
そう尋ねられ、紗夜とうららの顔が強張った。
「……呪術師に、襲われた」
硬い声で答えた紗夜は、その身に起きた出来事を余さず説明した。
突如としてうららの屋敷に現れた呪術師。
彼女に襲撃されたふたりは、瀕死の重傷を負った。
「でも、いま……」
どう見ても無傷だ。
紗夜もうららも、瀕死だったなんてとても思えない。
「“回復魔法”を持つ魔術師が、偶然救ってくれましたの。星ヶ丘の3年で、名前は三葉日菜────なんと、彼女は八雲さんのお仲間だそうですわ」
「至の……!?」
「それと、呪術師から重要な情報を仕入れた」



