「うっわー……如月冬真もしつこい奴だなー。どんだけ大雅のこと好きなんだよ」

「サドマゾなだけだろ」

「はは、桐生くんは何処までも反抗的だよね」

「そりゃな。嫌いだし」

 二人と話しながら、大雅は何処か不思議な気分になった。

 学年もタイプも異なる彼らとは、恐らくゲームがなければ関わることもなかっただろう。

 それは当然、小春たち他の仲間にも言えることだが、奏汰たちとは“同じ学校の生徒”という繋がりもあり、一層そのように感じられた。

 ついこの間までは、こんなふうに一緒に下校するとは思いもよらなかった。

 ふと、陽斗は気になった。

 どう見ても相性最悪な冬真と大雅だが、当初は何故行動をともにするようになったのだろう。

 尋ねてみようとしたとき、ちょうど大雅が立ち止まった。

「俺、こっちだけど……お前らは?」

 どうやら岐路に差し掛かったらしい。

 大雅は右手に伸びる道路を指して問うた。陽斗とは方向が異なるが、奏汰は頷いた。

「俺も同じだよ」

「マジか、俺だけ別じゃん」

 陽斗はやや大袈裟に項垂れる。出来ればもう少し互いについて掘り下げたかったが、それはまた今度の機会になりそうだ。

「そんじゃ、また明日な!」

 朗らかな笑顔を湛え、二人に手を振った。

「ああ、じゃあな」

「またね」



 二人と別れた陽斗は、特に何事もなく自宅へ到着した。

 明かりの漏れるキッチンに「ただいまー」と声をかけつつ、自室のある二階へと上がる。

 夕飯まで、最近ハマっているシューティングゲームでもやろう、と心を弾ませつつ扉を開けた。

「ん……?」

 漫画や脱ぎ捨てた服で散らかった部屋の中央に、異質な少女が立っていた。室内なのに傘をさしている。

 市女笠を被っている上、フェイスベールをつけており、顔の全貌は窺えない。膝丈ほどの漢服風の衣装といい、全体的に真っ白な雰囲気だ。

 明らかにこの空間とはマッチしない。

 少女がゆったりと顔をこちらへ向けた。

「誰だ、お前。どうやって入ったんだよ? 魔法か?」

 一瞬、祈祷師とやらが現れたのかと思った。しかし、祈祷師は男だと聞いている。

 彼女も彼女でただ者ではないだろう。魔術師だろうか。

 少女は不敵に微笑んだ。

「よく分かってるじゃん。その通り、魔法ですよ〜」

 くるくると傘を回し弄ぶ。

 いったい、何の魔法だと言うのだろう。思いつくのは“瞬間移動”だが、それは────。

「ねぇ、私が何しに来たのかももう分かってるでしょ? 今さら喚いたりしないでよね。身から出た錆なんだから」

 少女は言いながら、右手を銃のように構えた。

 その人差し指の先が陽斗に向けられる。