ウィザードゲーム〜異能バトルロワイヤル〜


 悪態(あくたい)をついた霊媒師に、祈祷師はけらけらと笑った。

「何よ」

「いやいや。そんなに見下してるケド、割と互角だったじゃん」

「し、しょうがないでしょ! いくらわたしたちでも、下界(した)に降りたら攻撃効いちゃうんだから。そこではわたしたちも、あいつらと同じようなものなんだもん」

 必死で弁解するものの、呪術師は「はいはい」と小さく笑った。

「言い訳は十分。認めることだね、あの子もそれなりに強かったんだよ」

 正確には陽斗が特別強かったというより、この中でも霊媒師が最弱であることに起因するのだろう。

 同じ天界の面々、運営側の面々とはいえ、その実力には差があった。

 際限(さいげん)なく異能を操れる陰陽師がトップであることは言うまでもなく、次点は祈祷師といったところだろう。

 当の本人は、ふあ、と大きくあくびをすると、頭の後ろで手を組んだ。

「とりあえず……ボクたちはまたしばらくオブザーバーだね。ミナセコハルはとんだ()()だったなぁ」



     ◇



 学校を抜け出した冬真と律は、人質のうららを連れてあてどもなく歩く。

 記憶は操作されていないものの、彼女は絶対服従の術にかかっていた。

「…………」

 琴音が死んだことで、蓮たちをつけ狙う理由はなくなった。
 けれど、大雅の存在は欲しい。

 相変わらず硬直魔法は得られていないし、いまは単に空間操作系の魔術師をひとり潰したに過ぎない。

 瞬間移動よりもっと強力な時間操作系────具体的には“時間停止”や“時間逆行”といった能力があるはずだ────の方が厄介だった。

 冬真の異能は時間に依存するからだ。

 その目的を果たすためには、大雅の協力が不可欠だ。
 連れ戻して魔術師リストを完成させなければ。

「ねぇ。あなたたちは随分と仲がよろしいみたいだけれど“最後”はどうなさるの?」

 ふと、うららは疑問をぶつけた。

 このゲームはバトルロワイヤルだ。最後に生き残れるのはひとりだけ。

「……俺は、唯一の生存者になる気はない」

 淡々と律は答える。

「こんなばかげた事態に巻き込まれて迷惑してるんだ。連中に生かされるのは(しゃく)だから、その前に死を選ぶ」

「……それは、如月さんのため?」

「さあな」

 思わず尋ねるも、否定でも肯定でもない、曖昧な返答に真意はぼかされた。

「まあ、俺は……基本的に誰も信用していないし、仲間なんかいらない。これだけは言える」

 少し意外だった。

 誰より冬真に忠実であるように思えたけれど、その根底にあるのは、仲間意識ではなかったようだ。

 冬真は特に気を悪くした様子もない。承知の上なのだろう。

「でしたら、どうして如月さんと?」