呪術師はもったいぶるように腕を組む。

「そうだねぇ……。まず、プレイヤーの対象についてはダイスで決めた。あんたらは運がいいね」

「ダイス? んな適当なもんで────」

「これはゲームなんだ。公平に楽しくいかないとね」

 その結果として“高校生”が巻き込まれたというわけだ。

 会話の流れから嫌でも察する。呪術師は、運営側の一員だ。

 自分たちが倒すべき相手のひとり。
 そう認識した途端、急激に自信がなくなっていく。

 果たして、こんな連中に敵うのだろうか……?

「ついでに教えてやろう。代償についても」

 呪術師は優雅にも扇子をあおいでいる。

「代償もダイスで決まってるんだ。臓器ならどの臓器か、寿命や記憶なら何年分か。当然、出目(でめ)は6以上あるがね」

「…………」

「ああ、そうそう。代償の選択肢の4つ目はね、あたしらに完全に委ねるって意味だ。1から3に含まれるものはもちろん、それ以外も代償の候補になる」

 臓器や四肢などを失う可能性もあり、また、それらに含まれない寿命や記憶を奪われる可能性もあるということだろう。

 最も“賭け”のような選択肢に思えた。

 運がよければそのほか3つの選択肢より軽い代償で済むが、悪ければ即死だ。

「……で、おまえらの目的は……?」

 息も絶え絶えで、絞り出すように尋ねる。

 なぜ、運営側が自分たちを狙うのか。
 なぜ、こんなくだらないゲームを仕組んだのか。

「目的ね……。それは、最後の生き残りになったら教えてあげよう」

 呪術師の赤い唇が弧を描いた。

 地響きがして轟々(ごうごう)と揺れたかと思うと、床を突き破って緑々(あおあお)しい蔦が伸びてくる。

 胴や両足に絡みついて、蓮は身動きが取れなくなった。

「く……っ」

 呪術師は悠然と歩み寄った。
 だんだんと色を失っていく彼の顔を眺め、そっと顎をすくい上げる。

「もっとも、あんたはここでゲームオーバーだけどね」

 ────次の瞬間、彼女の右手が蓮の身体を貫いた。

 臓物(ぞうもつ)が飛び散り、鮮血(せんけつ)が舞う。
 蓮は朦朧(もうろう)と深い血の海へ沈んでいった。