「あ、あのメッセージは何なの……? わたしたちのクラスや学校以外にも魔術師はいる。嘘なんでしょ?」
「ありゃりゃ、バレちったか。ま、そうだねー。特定のクラスだけを殲滅するってのは確かに嘘」
祈祷師は口を曲げた。
「だって、スルーされて殺し合ってくれなかったら、こっちが困るかんね。ま、要するに“釣り”みたいなもんさな」
やはり、それは小春たちの推測通りだった。単なる扇動に過ぎなかったのだ。
「12月4日っていうのは────」
「それはホント。戦おうが戦わまいが、その日にはすべてが終わる。みーんな死ぬ」
「……!」
小春の蒼白な顔を見た祈祷師は、へらへらと笑った。
「なになに、いまさら絶望? キミ、おバカさんだねぇ。別に何も変わんないじゃん? もともとそういう予定だったんだからさ」
彼の口元から笑みが消える。
「ボクたち、最初から言ってるよね? 嫌なら殺し合え、って。そんでひとり生き残ったヤツだけが助かる。単純めーかいデショ?」
小春は肩を震わせた。
恐ろしいのか、怒っているのか、自分でも感情の整理がつかない。
ただ、面と向かって身勝手な理屈を並べ立てられ、直接悪意に触れたいま、はっきりと思う。
そんなことがまかり通るなんておかしい。
自分たちが巻き込まれる筋合いなんてない。
ぎゅ、と握り締めた両手に力が込もる。
「そんなの、滅茶苦茶すぎる……!」
「ははは。まー、言ってなよ。嘆いたって状況は変わんない。さー、どっちが早いかな? コウコウセイを皆殺しにするのは────キミたちか、ボクたちか」
何を言おうと、彼らはゲームを止める気なんてない。
それを思い知らされた。
「じゃ、そろそろ殺っていい? ちっと喋りすぎた。ま、どのみち殺すからいいんだけどねー」
冷ややかな声色から一転、興がるように彼は首を傾ける。
彼の多彩な異能の前では、まともに戦ったとしても絶対に敵わないだろう。
少なくとも、自分ひとりでは。
いずれ倒すとしても、いまは逃げるしかない。
「そーれ」
祈祷師が両手をかざすと、小春を取り囲むようにして円形の炎が地面から燃え上がった。
その熱気に怯みながらも、何とか地を蹴って空中へ逃れる。
ぺろりと舌なめずりをした祈祷師は、空中の小春を見定めると腕をもたげる。
人差し指と中指を、真一文字を描くように動かした。
ヒュッ、と何かが素早く飛んできたのが分かったが、突然のことで小春は避けきれなかった。



