放課後になると、大雅と奏汰、陽斗はともに帰路についた。
陽斗は昨日退院し、今日から学校へ復帰したところだ。
「……でも、何か信じられないな。琴音ちゃんが亡くなったなんて」
目を伏せた奏汰はぽつりと呟いた。
実感が湧かないという意味でも、彼女が敗北したという意味でも、未だに信じられない。
「やっぱ、あのとき止めるべきだった。つか、俺が行くべきだった」
うららの奪還を安易に任せてしまったことを悔いて、大雅は表情を歪める。
「おまえが行ってたら、おまえが殺されてたかもよ」
「それに、祈祷師なんて存在は知らなかったわけだし……」
陽斗と奏汰の言葉はもっともだけれど、だからと言って割り切れない。
「……ねぇ、桐生くんはこれからどうするの?」
「ん?」
「如月くんにも色々バレちゃったわけでしょ。学校も危険なんじゃない?」
奏汰の言葉に大雅は「んー」と唸った。
「確かにな。ま、でも全力で逃げるしかねぇ。学校でも顔合わせねぇようにするし」
「そこまでして通う必要あんの? 大雅って不良の割に真面目なとこあるよなー」
「別に真面目なわけじゃねぇよ。それで言ったらおまえらも危ねぇぞ。あいつらにバレたら……」
「大丈夫! そうなったら俺らはすぐ休むし」
陽斗は得意気に笑う。
戦闘狂の彼でも、時に身を引く判断が大切であることは承知していた。
「そうだね。逆にそれまでは、下手に慎重になりすぎない方がいいかも。かえって怪しまれそうだし」
「あ、俺らが魔術師ってことはバレてんの?」
「いや、いまはまだ。でも俺が捕まって連れ戻されたらアウトだな」
現状、星ヶ丘高校に限って言えば、冬真に報告したのは1年生の魔術師だけだ。
2、3年生の魔術師についてはまだ精査していない。
しかし、もし大雅が引き戻された挙句、再び服従させられようものなら、それらを“見る”よう強いてくるにちがいない。
「うっわー……如月冬真もしつこい奴だなー。どんだけ大雅のこと好きなんだよ」
「サドマゾなだけだろ」
「はは、桐生くんはどこまでも反抗的だよね」
「そりゃな。嫌いだし」
ふたりと話しながら、大雅はどこか不思議な気分になった。
学年もタイプも異なる彼らとは、恐らくゲームがなければ関わることもなかっただろう。
それは当然、小春たちほかの仲間にも言えることだけれど。
岐路にさしかかり、それぞれが足を止める。
どうやら陽斗だけ方向が異なるようだった。



