『祈祷師は瀬名さんの遺体を消すと、自分自身も消えた……。それはこの目で見ましたわ』
「消えた?」
『ええ。それと、瀬名さんを殺めたのは祈祷師だから、彼女の異能が如月さんたちに渡ったということはありませんわ。天界とやらにいる、祈祷師のリーダーのもとへ還った、と……』
大雅は険しい表情を浮かべた。
仲間の死を悼む間もなく、分からないことばかりが増えていく。
「“天界”とか“祈祷師”とか、もうわけ分かんねぇよ……」
うららの話を伝え聞いた蓮も困惑をあらわにした。
祈祷師などという異能者は、魔術師の一種なのだろうか。
それとも、まったくの別ものなのだろうか。
天界とは何を指すのだろう。
なぜ、自分たちが狙われるのだろう。
なぜ、祈祷師は冬真たちに手を貸すのだろう……?
教室へ戻って席につくと、どっと身体が重くなった。
思わず目を閉じると、琴音との記憶が蘇ってくる。
当初、瑠奈から救ってくれた彼女は、仲間として常にゲームにおける指標となってくれていた。
『────助けてくれてありがとう、小春』
やっと、理解し合えたところだったのに。
もう二度と会うことはできない。声も聞けない。
主を失った彼女の机を見た。鞄やペンケースが置かれたままだ。
よくやく、死という事実が認識として深く浸透してきた。
悲しみ、怒り、驚き、やるせなさ。あらゆる感情が混濁して涙に変わる。
喉の奥が締めつけられるような痛みを飲み込んで、必死でこらえた。
ふと、小春は瑠奈の机を見やる。
(まさか、瑠奈も……?)
突如として姿を消した彼女も、もしかすると祈祷師の襲撃を受けたのかもしれない。
祈祷師とは、いったい何者なのだろう。
「…………」
小春は俯いた。
自分の言葉が、自分を責めるように頭の中でこだまする。
『そのときは……襲われたときは、わたしが助ける。わたしが守る、みんなのこと』
ぎゅう、と膝の上で拳を作った。
(わたしに何ができる……?)
何もできない。何もできなかった。
だから、次から次へと仲間を失う。
誰も守れない無力感に苛まれながら。
────小春はスマホを取り出す。
縋るように強く、両手で握り締めた。



