「……そういえば、名花で死亡者が出たらしいですわね」
うららの言葉に琴音の眉がぴくりと動いた。
小春は小さく頷く。
「うん……。彼は、わたしたちの仲間」
「あら、そうでしたの……? 無神経に踏み込んでごめんなさい」
「どうして亡くなったの? 誰かに殺された? 異能はどうなったの?」
掘り下げることに躊躇を覚えたうららとは一転、紗夜は無遠慮に尋ねた。
「ちょっと、紗夜」
「なに? 立ち止まっててもしょうがないじゃん……。仲間だったって言うなら、残された人間にできるのは、せいぜい彼の死を無駄にしないことでしょ」
いつものようにたしなめたものの、今回ばかりは紗夜の言い分が正しいように思えた。
琴音は一度目を閉じてから「そうね」と静かに頷く。
「あなたたちにも話しておくわ。同盟も結んだことだしね」
慧の死に関して、そしてその日の出来事に関して、琴音が中心となりながら説明した。
冬真や律という脅威と、彼らと大雅の関係、さらに瑠奈の存在に至るまで包み隠さず伝える。
すべてを聞き終えたとき、うららの表情が怒りに染まった。
「とんでもない畜生ですわね、如月冬真とやらは……。わたくしたちも加勢するから、さっさと殺してしまいましょ」
目には目を、歯には歯を、死には死を────。
紗夜もうららも小春たちと目的は一致していたものの、殺しを厭うことはなかった。
危険因子も、悪党も、仇敵も、ひとり残らず殺してしまえばいい。
魔術師となったことで、せっかくそれが許されたのだから。
憎い相手に直接制裁を下すことができる権利を行使しない手はないだろう。
さもなくば泣き寝入りだ。
「待って、だめ。わたしたちは誰も殺さないって決めたの」
彼女たちにも笑われるだろうか。それでも、この主張だけは譲れない。
相容れないのなら、同盟も諦めるほかない。
「どうして……?」
紗夜が翳った瞳を小春に向けた。
うららも不思議そうな表情で答えを待っている。
「……わたしたちにそんな資格はないから。殺したら、運営側に踊らされてるのと同じだよ。わたしたちはみんな同じ立場なの。だから、殺し合うんじゃなくて助け合いたい」
言いながら小春はどことなく緊張した。
この答えが、彼女たちとの道を決するように思えた。



