この場にいるほとんどの面々が、眉をひそめたり俯いたりと否定的な反応を示した。
「……わたしは魔術師同士で争うんじゃなくて、ゲームを仕組んだ運営側を倒したいと思ってる」
「小春だけじゃねぇよ。俺たち、な」
それぞれの言葉と強い眼差しを受け、紗夜とうららは顔を見合わせた。
やがて、うららは嬉々として頷く。
「どうやら、わたくしたちと同じ志をお持ちのようね。よかったですわ」
「それじゃ、きみたちも……」
「うん、わたしもうららもみんなと同じ考え。同志と情報が欲しくて、あなたたちを尾行して接触したってわけ……」
“運営側を倒す”という目的に対し、すぐさま肯定的なリアクションを受けたのは初めてだった。
ほっと緊張と警戒が緩む。
「ちょうどよかったわ。わたしたちも情報が欲しいところだったの」
「でしたら、正式に同盟を組みましょう。さっそく情報共有といきますわよ」
「とりあえず、わたしたちの把握してることを教えてあげる……」
紗夜はおもむろに背負っていたうさぎ型のリュックサックを下ろした。
中から一冊の小さなノートを取り出す。
「これ、読んで……」
差し出されたそれを受け取った小春は、そっと表紙をめくった。
【〈ウィザードゲームのルール〉
①魔術師同士で殺し合うこと。
②一般人を殺すと、ペナルティとして異能を没収され、魔術師の資格を剥奪される。
③魔術師を異能で殺すと、その相手の異能を奪うことができる。ただし、1人が保有できる異能は最大で5個まで。
既に5個保有状態なら、すぐさま取捨選択する。
手動でスロット内のいらない異能と入れ替えると、その瞬間処理される。また、殺したとしても異能を奪うかどうかは自由。
※異能以外で殺害した場合、死体の保有する異能は即時消失。
④異能の会得に代償がかかるのは「ガチャ」を使用したときのみ。ほかの魔術師から奪った場合は代償なし。
⑤異能は、殺した本人のみ奪取可能。異能の残留時間は5分。
死後5分が経過しても死体に異能が宿ったままだと、その異能は自然消滅する。
⑥魔術師同士の認識はない。つまり、誰が魔術師で誰がそうでないかは分からない。
ただし、見分けられる異能もある。
⑦異能を使用すると反動を受ける。特に時空間操作系、回復系は体力消費が激しく、連発することは難しい。あまり無理をすると吐血するなど身体にガタがくる。
最悪、異能の使いすぎで命を落とす場合も。
⑧基本的に、術者が死亡あるいは気絶すると、異能は強制的に解除される。例外もある。
⑨いかなる場合も異能の譲渡は不可。
⑩共闘は自由。ただし、最終的に生き残れるのは、たったひとりだけ】
各々が思わず嘆息した。中には初めて知る内容もある。
それへの驚きもそうなのだが、何よりここまで突き止めたふたりの労力に感心してしまう。
「すごい……。これ、どうやって?」
「色々な伝手がありますのよ。ただ……その反応からして、どうやらこれ以上の情報は出てこなそうね」
「うん……。でも、まだまだ不完全だよ。ゲームのルールもこれでぜんぶってわけじゃないだろうし、見て分かるように運営側については何も分かってない……」
これほどの情報があっても、紗夜たちの状況は小春たちとほとんど同じのようだった。
ゲームに関する情報は生存のために不可欠だけれど、喫緊で求めているのは運営側の情報だ。
それが皆無である現状、手詰まりと言わざるを得ない。



