ウィザードゲーム〜異能バトルロワイヤル〜


 大雅は、今度は紗夜に向き直った。

「次はおまえだ」

「…………」

 伏し目がちな視線を上げ、紗夜は大雅と目を合わせる。

 あらゆる毒を扱うことができる毒魔法。
 かぶれる程度の軽い毒から、死に至るほどの猛毒まで様々に調整が可能だった。

 どうやら、毒性が強くなるほど反動が大きくなるという弱点があるようだ。

 毒を作り出すだけでなく、術者自身も毒性を帯びることができるが、その場合が最も大きな反動を伴う。下手をすれば命を落としかねない。

 また、術者の血液を飲ませることによって解毒できる。
 必要な血液量は、毒の強さによるようだ。

「なるほどな。だから注射器使ってんのか」

「……おい、大雅。俺らにも分かるように教えてくれよ」

「ああ、分かってる」

 蓮の言葉に応じた大雅は全員とテレパシーを繋ぎ、それぞれの意識へ呼びかける。

 顳顬に触れながら、空いた方の手でそれぞれの腕に触れていく────。

 頭の中に何かが流れ込んでくるのが分かり、小春は思わず額に手を当てた。

 言葉というよりは認識だった。
 紗夜とうららの情報が、勝手に脳裏(のうり)に焼きついていく。

「凄いですわね。不思議な感じ」

「テレパシー魔法か。そういうこと……」

 うららと紗夜はそれぞれ口にした。
 説明しなくても能力の全容を把握していた理由に合点がいく。

「……なあなあ。能力は分かったけど、紗夜が注射器を使う理由が分かんない。大雅はさっき“なるほど”って言ってたけど、何でなんだ?」

 陽斗は首を傾げた。

 注射器はリーチも短ければ、扱うのに手間もかかる。
 素手から毒を繰り出せるのなら、そうした方がいいように思えた。

「“温存”しておくため?」

 確かめるように口にした小春に、紗夜は小さく頷く。

「どういうことだ?」

 陽斗はさらに首を傾げた。
 自ら説明する気などなさそうな紗夜に代わって小春が続ける。

「紗夜ちゃんの異能は、毒性が強くなるほど激しい反動を伴う。たとえば戦いの中で使ったら、反動で動けなくなってやられちゃうかも」

 しかし、戦闘においてこそ強い毒を使いたい。────だから。

「あー! 分かった、そういうことか。余裕がある間にストックを作っとくってわけだな」

 いまのような平常時にあらかじめ猛毒を作り出し、注射器に蓄えておくのだ。
 戦いの最中でなければ反動を受けても支障はない。

 そのために注射器を用いるのは、単純に毒と相性がいいからだろう。
 効率よく相手の体内に注入できる。

 あるいは、単に紗夜の趣味かもしれないけれど。

「────ところで」

 ふと、紗夜は口火を切った。

「みんなはこのゲームのことどう思ってるの……?」