ウィザードゲーム〜異能バトルロワイヤル〜


 改めてはっきりと告げた。
 運営側を倒すという途方もない目的と、魔術師同士で殺し合わないという約束。

 陽斗は吟味(ぎんみ)するように目を瞑り、腕を組んだ。

「んー。戦えなくなるのはつまんないけど、どっちみち俺、暴れないって約束しちゃったもんなぁ」

「戦えなくなるわけじゃないわ。戦う相手が変わるだけよ」

「あ、確かに! じゃあ賛成」

 彼の場合はただ戦いたいだけなのだろうけれど、最終的な目的は一致した。

「……ありがとう、陽斗くん」

「礼なんていらねぇよ。俺も力になるぜ」

 初めて小春たちと会った日、問答無用で戦いを仕掛けた陽斗は彼女たちを苦しめた。

 それなのに、小春は命を奪う選択をしなかった。仲間として受け入れてくれた。

 今度は陽斗がその意を()んで受容(じゅよう)するべきだ。仲間なのだから。

「……戦闘狂っつったらよ、陽斗襲った奴って結局瑚太郎なのか?」

 難しい顔をしながら蓮が尋ねると、陽斗の表情が曇る。

「分かんねぇ、顔隠してたし……。でも使ってた異能は瑚太郎のだった」

 フードを目深(まぶか)に被った男と、彼が繰り出してきた水魔法を思い出す。

「いっそ問い詰めましょ。佐伯に連絡して、連れてきてもらって」

「大雅くんも来られないかな?」

 この場に瑚太郎を呼び出して問い詰めたとしても、結局この間と同じ展開になって終わるような気がした。

 らちが明かない。その点、大雅がいれば真偽は一発で分かる。

「確かに。……なあ、大雅」

 蓮はさっそく人差し指を顳顬に当て、彼に呼びかける。

 ────それから20分と経たずして、病室に3人が姿を現した。

「先に聞かせてくれ」

 陽斗は険しい表情で瑚太郎を見上げる。

「おまえが俺を殺そうとしたのか?」

 単刀直入に尋ねた。
 この場で唯一答えを知っている大雅は、何も言わずに彼を見やる。

「僕は……」

「相手は水魔法の使い手だった。その能力の持ち主は瑚太郎、おまえだろ」

 語気を強めた陽斗に、瑚太郎は狼狽(ろうばい)するように俯いた。
 迷子の子どものように不安定な表情だ。

 大雅は彼自身の答えを待った。
 誤魔化したり嘘をついたりするようなら、この場で真実を明かすつもりで。

「僕、は……」

 瑚太郎は戸惑っていた。

 友だちである陽斗のことを襲うわけがない。
 そう思うものの、心当たりがあるのも事実だった。

 陽斗を襲った魔術師が水魔法を使っていたという事実。
 そして、それが()()だったこと。

「……ごめん。たぶん、僕だと思う」

 それぞれが困惑したような表情を浮かべる。

「“たぶん”ってどういうことだよ?」

「……実は僕、二重人格なんだ」