「回さなければ無力な“魔法使い”っつーわけだ」
「魔法を持たない魔法使いってこと? そんなの魔法使いって言うの?」
「まあ、だから生き残りたいなら結局回すしかねぇんだよな。代償にビビって回さなかったら、ほかの魔術師に狙われたとき、十中八九なす術なくゲームオーバーだ」
空になったパックをくしゃりと潰す蓮。
小春は思わずぞっとした。
「わたしはどうすれば────」
「魔術師になった以上、ベストなのはガチャ回して早いとこ異能を手に入れることだな。使いこなさねぇとだし。……でも、おまえは回すな」
「えっ?」
思わぬ言葉に戸惑った。
彼はガチャに肯定的で推奨派のように見受けられたのに、ちがうのだろうか。
「再三言うけど、能力の会得には代償が必要だ。でも、何を失うかは分からない」
確かに四肢や臓器といった大きなカテゴリーの中からは、自分自身で選択できる。
しかし、たとえば“臓器”を選んだとしても、どの臓器を失うかまでは選べない。
会得できる異能はもちろん、代償の部分も運によるのだ。
「それがもし“心臓”だったら?」
その言葉に息をのむ。
どく、と存在感を主張するように心音が大きく鳴る。
「……土俵にすら立てず、ゲームオーバー」
蓮の示した可能性は、大いにありうるものだと言えた。
「だからおまえは引くな。俺が守るから」
凜としたまっすぐな眼差しからは、揺らがない強い覚悟が窺えた。
けれど、大人しく引き下がれない。
それでは、蓮が危険に晒され続けるという意味にしか捉えられないからだ。
「ほかに、異能を得る方法はないの?」
「まあ、あるけど……無理だな」
「どうして?」
断言した蓮に、反射的に尋ねていた。
身体の一部を差し出す以上に難易度の高い条件があると言うのだろうか。
「いいか、異能を得る方法はふたつだ。ひとつはガチャ、もうひとつは────」
蓮は射るような厳しい表情を浮かべた。
「魔術師を殺して奪う」



