その3
「こんにちわ。時間ちょうどですね。どうぞ…」
「はい…。では、失礼して…」
”声…、アニメ系じゃねーわ。コリャハナ丸、5重丸だって❣”
彼女の声は以外にもハスキーだったのだ。
しかも舌っ足らずではない、落ち着いた言葉遣いのできる口だったのだ。
舌っ足らずのアニメ甘え調のお口がNGだったキナオは、この時点雲にも舞い上がる気持ちに達していた!
彼女は部屋の中に入ると、瞬時で富士山を一望できる大窓の正面に移動していた。
それは歩くというよりベルココンベアーでスーッと運ばれるように…。
「あー、ココ…、ロケーションいいんですよね。嬉し~。私、ココ、結構なんですけどね…」
リナコ(この時点で彼女はまだ名乗っていないが!)は眼つきこそキツめであったが、健気な笑顔で、無茶可愛かった。
とても!
こうなると、キナオはもう有頂天・夢心地・脳内お花畑…、まさにそれ全部…、完璧、クラクラ状態と至る…。
「えーと、まずは事務所に報告させてもらっていいですか?」
「ええ、どーぞ」
ここで彼女は派遣元へスマホから発信した。
その会話はやや小声の事務的な口ぶりではあったが、特段客であるキナオに伏せるような素振りはない。
で…、スマホの会話はものの数十秒で終わった。
***
「お待たせしました~❣えーと、よろしかったら、お名前…、下の方だけでも結構なんですけど、伺っちゃっていいですかね❓」
彼女は落ち着いた滑舌ながら、客であるキナオとの距離を正面1メートルまで詰めるとキャピキャピモードでこう切り出した。
「じゃあ、下の名前だけ。キナオです」
「キナオさん…、ね❓じゃあ、私も下の名前を…」
ここでキナオは彼女をさえぎり、早口でこう返した。
「お店的にはリナコさんですよね!左手の指4本マタギでピンクスネークのタトゥーを入れた…」
「ああ、そうか…。今日は指名だったんだわ」
ここで、この場にいる彼女がキナオお目当てのその女であり、リナコであるということを確信する。
だが、この時のリナコはなぜかバツの悪そうな表情となっていた。
それをいち早く察知したキナオは想定通りの言葉をリナコに放った。
「最初にネタバレします。おそらく、自分だけじゃないと思うけど、あなたのことはネットで知り得た上で指名しました。そういうことです、リナコさん…。とにかくピンクスネークのオンナとしてのあなたについて…、それは”いろいろ”とです…」
「…」
リナコは口を真一文字に結んで、じっとキナオの目を見入って聞いていた。
それは真剣な顔つきで…。
「で…、そりゃー、えらく迷ったけど、あなたを指名して東京から来たんです!当然、あなたから出るであろう、”事前条件”を承知するつもりで…」
ここでリナコは小さく肩で息を吐いた後、ベッドに腰を下ろし、手にしたバッグを足元におろした。
その絵柄は、そっとではなくペテンという感じで尻を着き、そっとではなくポーンという感じで手放したと1
「最近多いんですよね、そういった興味本位のお客さん…。でもね、私とフルコースってことにはやっぱ、覚悟をしてもらわないと…。キナオさんは大方承知でしょうから、端的に言うけど…。私は抱かれてる人には爪を立てちゃう訳なんだけどさ…、それって、厳密には私の意思からってことじゃないのよ。言わば、その時の私の左手の爪…。親指を除く4本はね、別の生き物となってる。だから、私にはどうにも制御できないの」
リナコはこんなコアな告白をさらっと一気に語った。
対するキナオは正直、衝撃を受けたが、もっともそれは想定の範疇…、もっと言えば、期待値のボーダーラインを超えていたと…。
その上で、彼は彼女にこう宣言した。
「承知しましたよ、リナコさん。それ、大丈夫ですから。…幾らですかね?」
こう言って、キナオはポケットの財布を取り出すのだった…。
「こんにちわ。時間ちょうどですね。どうぞ…」
「はい…。では、失礼して…」
”声…、アニメ系じゃねーわ。コリャハナ丸、5重丸だって❣”
彼女の声は以外にもハスキーだったのだ。
しかも舌っ足らずではない、落ち着いた言葉遣いのできる口だったのだ。
舌っ足らずのアニメ甘え調のお口がNGだったキナオは、この時点雲にも舞い上がる気持ちに達していた!
彼女は部屋の中に入ると、瞬時で富士山を一望できる大窓の正面に移動していた。
それは歩くというよりベルココンベアーでスーッと運ばれるように…。
「あー、ココ…、ロケーションいいんですよね。嬉し~。私、ココ、結構なんですけどね…」
リナコ(この時点で彼女はまだ名乗っていないが!)は眼つきこそキツめであったが、健気な笑顔で、無茶可愛かった。
とても!
こうなると、キナオはもう有頂天・夢心地・脳内お花畑…、まさにそれ全部…、完璧、クラクラ状態と至る…。
「えーと、まずは事務所に報告させてもらっていいですか?」
「ええ、どーぞ」
ここで彼女は派遣元へスマホから発信した。
その会話はやや小声の事務的な口ぶりではあったが、特段客であるキナオに伏せるような素振りはない。
で…、スマホの会話はものの数十秒で終わった。
***
「お待たせしました~❣えーと、よろしかったら、お名前…、下の方だけでも結構なんですけど、伺っちゃっていいですかね❓」
彼女は落ち着いた滑舌ながら、客であるキナオとの距離を正面1メートルまで詰めるとキャピキャピモードでこう切り出した。
「じゃあ、下の名前だけ。キナオです」
「キナオさん…、ね❓じゃあ、私も下の名前を…」
ここでキナオは彼女をさえぎり、早口でこう返した。
「お店的にはリナコさんですよね!左手の指4本マタギでピンクスネークのタトゥーを入れた…」
「ああ、そうか…。今日は指名だったんだわ」
ここで、この場にいる彼女がキナオお目当てのその女であり、リナコであるということを確信する。
だが、この時のリナコはなぜかバツの悪そうな表情となっていた。
それをいち早く察知したキナオは想定通りの言葉をリナコに放った。
「最初にネタバレします。おそらく、自分だけじゃないと思うけど、あなたのことはネットで知り得た上で指名しました。そういうことです、リナコさん…。とにかくピンクスネークのオンナとしてのあなたについて…、それは”いろいろ”とです…」
「…」
リナコは口を真一文字に結んで、じっとキナオの目を見入って聞いていた。
それは真剣な顔つきで…。
「で…、そりゃー、えらく迷ったけど、あなたを指名して東京から来たんです!当然、あなたから出るであろう、”事前条件”を承知するつもりで…」
ここでリナコは小さく肩で息を吐いた後、ベッドに腰を下ろし、手にしたバッグを足元におろした。
その絵柄は、そっとではなくペテンという感じで尻を着き、そっとではなくポーンという感じで手放したと1
「最近多いんですよね、そういった興味本位のお客さん…。でもね、私とフルコースってことにはやっぱ、覚悟をしてもらわないと…。キナオさんは大方承知でしょうから、端的に言うけど…。私は抱かれてる人には爪を立てちゃう訳なんだけどさ…、それって、厳密には私の意思からってことじゃないのよ。言わば、その時の私の左手の爪…。親指を除く4本はね、別の生き物となってる。だから、私にはどうにも制御できないの」
リナコはこんなコアな告白をさらっと一気に語った。
対するキナオは正直、衝撃を受けたが、もっともそれは想定の範疇…、もっと言えば、期待値のボーダーラインを超えていたと…。
その上で、彼は彼女にこう宣言した。
「承知しましたよ、リナコさん。それ、大丈夫ですから。…幾らですかね?」
こう言って、キナオはポケットの財布を取り出すのだった…。