その3


その数分前…。

”おー、わりかし音声オッケーじゃん。ふふ…、映像も☺特定何とかだし”

まだ全裸でベッドの中にあったミクは、天井に向かって左手に収まったスマホを凝視し、意味アリな濃い微笑を浮かべていた。

”ワカムラさん、けっこうコーフンしてて、良かったんだけど💖×2❣…まあ、あまりにすっぽり口説けたんで、エッチまでのプロセス物足りな感はアリアリだったけどさー、あの人、ゼッタイ、ワタシのカラダに欲情してたよ。アハハ~~、また一人、殉教者の偽り下半身晒してやったわ“

“でもまあ…、コドモ卒業後のワタシもよっぽどがなきゃ、ワカムラさんをこのネタで追い込むことないかな。ワタクシの大っ嫌いな3Cのあのオンナとデレデレ晒さなきゃ…。なら、証拠動画は卒業アルバムの特別付録(今風なら特別特典です!)みたいなものね…。大切にしよーっと❣”

で…、この胸の中のつぶやきで肝はこの後となる‼

”ゴメンなさいね、先生…。ワタシ、確かに生まれつきの悪性喘息持ちなんだけど、マスクずっとなコロナ禍で死んじゃう~~って叫びは演技でした。フィクションなんです。許してね…。うふふ…💖”

でも!
若村ジンヤはカノジョの身を深く慮っていたから、ある、新型コロナ最新情報(マニアチックなネット検索&海外ニュースのリアル読み解きレベルのソース‼⇒ワイドショーや民放のからニュースがジョーシキな大衆には未知の情報!!)を認知していたので…。

”ふう…、それにしても、第15波のハウリング株はここんとこ喉どまりだったスパイク結合が快速特急の如き肺にガブッてんだからな…。特に低年齢層の、生理前の免疫創出に忙しい思春期女子が、西ヨーロッパじゃあ、ぜんそくや肺の基礎疾患を持ってるとコロナ感染の後遺症でショック死する事例が多発らしい。有村は、そっちの方が心配だよ。前の担任から聞いたところでは、有村、昨秋に第16波のコロナ感染を患ったらしいし…”

ってこと!
故に、若村ジンヤは教師の立場で、2年生の有村ミク自身が知れている以上の余命いくばくという現実的リスクが視野に入っての、今般のリッチネル(最安部屋ながら!)って決断だったのだ。

親のココロ子知らず~~❓❓

かくて...、運命は純な悪意により、フィクション超えをもたらすことになる‼


💖💖💖



二人が生涯たった一度のリッチネル空間を過ごした3か月後、有村ミクは若村ジンヤの憂慮をなぞるかのように、新型コロナ第16波ウイルスの後遺症を伴う第17波ハウリング株の再感染での急性肺炎で急死した。

カノジョの葬儀の場…、カレは沈痛な表情で有村ミクの遺影(当然、制服姿!)を潤んだ瞳で見続けていた。
だが…、そんな満面笑みで健康そうなミクのもう一方たる、そそるオンナだった全裸姿もリンクされ、若村ジンヤは葬式という厳粛な場で、性的コーフンを拭いきれなかったと…。

16歳にして淫靡極まる内面を強く抱いていた有村ミクの遺した、カレとの動画や写メは遺族の手に渡った。

そのことは、無論、若村も十分に予測していたし、”それ”が以降、他者の目に触れてって局面が自らにもたらす絵柄は十分予期できた。

しかし、しかし~~!
若村のカクゴ(カノジョとのリッチネルは否定しないという決意!)は終始、生涯、萎えることがなかった。

なので…‼
二人の艶噺がどのような顛末を辿ったかは…、詮索の余地などなかった訳で‼

有村ミクの妖しくも幼い悪意は、その咲き方によってはクロユリにもひまわりにもなり得たであろう…。
だが、仮にドロドロまったりなクロユリって絵柄が二人のあの夜ってことで世間漏れしても、そこで写される”真実”は、虚実ながら美談のシュールを纏うことと言って間違いなかった。

なぜなら…!
有村ミクのプチ悪意は、英語の先生だった若村ジンヤが、究極の許容を以って産み落とした”もっこりな善意”に包括されていたのだから…。





FIN