「どんぐりか松ぼっくりでも贈ってはいかがです?」
「何を言う、ライラ嬢はもう17歳だぞ。さすがにそれは子供っぽすぎるだろうが!」

 マリエル様の頭髪は赤褐色、瞳はヘーゼルナッツの色だ。
 お返しにこちらも瞳の色でとなると、木の実しかないだろう。
 ライラ様が銀髪に紫色の瞳のお人形のように愛らしいお嬢様であるのに対し、マリエル様はいかにも山野戦向きの茶系統の毛並みのボス猿だ。

「そう思わせておいて、その木の実がぎっしり詰まった箱の中に指輪を忍ばせておくというのはいかがでしょうか」
 にっこり笑って進言すると、マリエル様はズキューン! と撃たれたかのように胸を押さえた。
「なんとロマンチック……」

 ボス猿が目をハートにしている光景ほど気持ち悪いものはない。
 遠い目でそう思っていたら、突然マリエル様が頭を抱え始めた。
「ダメだ! 女同士で指輪を贈るのはさすがにおかしいと思われるっ!」
「いつまで隠しておくおつもりですか。来年にはあなたたち結婚されるんですよ?」

 我が主は一体いつまで性別を偽るつもりなんだろうか。
 やれやれと思いながら頭を掻きむしるマリエル様を見守ったのだった。