グラーツィ伯爵家は、ライラ様の兄であるロエル様を使者としてよこしてきた。
 ロエル様はグラーツィ伯爵の長男で現在は王都で近衛騎士の小隊長を務めているが、いずれは家督を継いで内政に関わる要職に就くだろうと目されている人物だ。
 
 近衛騎士は王族の身辺警護を担当するという職業柄、私用での休暇を取りにくい。しかも王都と辺境の距離を考えると早馬を飛ばして来たのだとしても往復で1週間は休まなければならない。
 伯爵家の一大事、あるいは可愛い妹の一大事であるということで無理を押し通して連続休暇を取り、こうして遠路はるばるやって来たことだけでも評価しなくてはならないだろう。

「ロエルお兄様!」
 応接室にやって来たライラ様は、ロエル様の姿を見るや顔をパアっと輝かせて飛びついた。
「ライラ、元気そうじゃないか。母上が心配していたが、こちらで楽しく過ごしているみたいだね」
「はい! みなさんに良くしていただいております」
 おそろいの銀髪を揺らしながら微笑み合う様子が何とも絵になる麗しい兄妹だ。
 
 着痩せするタイプだろうか。ロエル様は騎士のわりにすらっとした体型で、思わずキラキラなロエル様とゴリゴリな我が主を見比べてしまった。