「そうだ! これ、頂いたクローバーであつらえたペンダントですのよ」
 ライラ様が胸元のペンダントを持ち上げてマリエル様に見せた。透明な樹脂で固められた立体的なペンダントヘッドの中心には四葉のクローバーが埋め込まれている。

「可愛らしいな」
 マリエル様が目を細めて微笑む。

「でしょう? 素敵な贈り物をありがとうございます」
「いや、可愛らしいと言ったのは……ライラ嬢の笑顔のことだ」
「まあっ♡」
 我が主は、正気を保つためにこっそり腰のあたりをつねるという技をここ数日で身に着けた。
 
 そして、むずがゆくなるような甘い言葉を――いや、マリエル様にとってはただ正直に本心を話しているだけなのだが――ストレートにライラ様に伝えるという技まで身に着け始めている。素直でまっすぐな性格なだけあって、伸びしろも成長も凄まじい。
 
「マリエル様? わたくしのことはどうぞ『ライラ』とお呼びください」
「ではそちらも『マリエル』と」

「マ……マリエル」
「ライラ」

 名前を呼び合うだけで真っ赤になる初々しいふたりから目をそらし、高い空を遠い目で見上げる。
 一体我々は何を見せられているんだろうか。
 
 隣に立つ隊員にチラリと目を向ければ、砂糖の塊を無理やり口に突っ込まれたような顔をしていた。
 こちらも同じだ。
 もう甘ったるくてかなわない。
 今宵の酒の肴はうんとスパイシーにしようと誓った。