器用なメイドたちの手によって押し花にされた四葉のクローバーの完成品は10枚だった。制作の過程で葉が折れてしまったものとちぎれてしまったものが1枚ずつありメイドたちは申し訳なさそうにしていたが、気は優しくて力持ちを体現しているマリエル様はそんな些細な事で怒ったりはしない。
 自分の鼻息で飛んで行ってしまうんじゃないかと完成した押し花を気遣いつつ、彼女たちにも金一封を振る舞って労っていた。

 そしてそれをライラ様へ送る手紙に同封したのが先月のこと。
(数枚ずつ何回かに分けて送ったほうがいいと言ったのに、ケチな人間だと思われたくないと言い張ってまとめて送った)
 つまり今回ライラ様から頂戴した栞はそのお返しというわけだ。
 それなのに、さらにその「お返し」とは、キリがないではないか。

 エンドレスなお返し合戦。まあ婚約者同士のおもはゆいやり取りと思えば何とも微笑ましい――本来はそうなのだろうが、いかんせんライラ様のお相手がこのボス猿である。
 「おもはゆくて微笑ましい」ではなく「怖ろしくてホラー」になってしまう。