「……というわけで、こちらのドレスはなんとダイアナ様のお下がりなんです」
 スカートを少しつまんで、うふふっと笑うライラ様は嬉しそうだ。

「ライラ様は、マリエル様が男性であることをご存じだったのですね?」
「もちろんですわ!」
 ライラ様は、ふんすと胸を張る。
「わたくし、よく天然だとか、ちょっとアレだとか言われておりますけど、マリエル様と婚約していることは存じ上げておりましたし、女性同士で結婚できないことももちろん知っていますもの」
 
 天然なのは間違いない……とは言わないほうがよさそうだ。

 ここでライラ様がすっと大人びた表情になった。
「国防の要である国境警備隊の隊長をされていらっしゃるマリエル様には、いつも感謝しております。もちろん隊員のみなさまにも」
 国境警備隊にとって、王都の貴族にそう言ってもらえるほど嬉しいことはない。
 マリエル様もライラ様の口からこれを聞いたら、さぞや喜ばれるだろう。
 いや、死ぬかもしれないな。