「ひょぉ、っ、!?」
と、思わずとんちんかんな声が出る。
後ろからお腹に回った腕が私の体をすんなりと持ち上げたからだ。
力強い彼の腕に私の体は支えられ、まるで子どものように抱きかかえられると、あっという間に着地できていた。
「…………」
一瞬何が起こったのかわからないまま。
そして夕凪くんには何を言われるわけでもなく、再び手を引っ張られ、目的地のわからない場所に向かって歩き始めた。
間を置いて途端に状況を理解した私は、かーーっと全身が熱くなっていく。
お腹をぎゅっと触られたこと。夕凪くんから直に香った良い匂い。
まるで後ろから抱きしめられたような感覚に、私の心臓はいよいよ胸から飛び出そうだった。
「ご、ごごめんなさい…っ…」
「……下りは階段にするから」
振り返らずにそう言った夕凪くんの返事は、どこか素っ気なくて呆れられているような気がした。
ただ少し、耳がほんの少しだけ……、
赤く見える。
その理由が何かはわからないけど、私は聞こえるか聞こえないかの声で小さく呟いていた。
──────、と。