何を食って何を見て生きたら、一途にただそれだけのことを思えるのか……俺には理解不能だった。
ウサギとカメの話をした時だってこいつは、読者に伝えたいであろう話の意図とは全く別の視点から物事を見ていた。
カメのようにコツコツ努力し続ければ目標に達成できるという意図をガン無視して、ウサギが居眠りした理由まで考える。
それも言われてみれば確かにそうだと思えることを。
そんなカメコを、見つけたのは俺だ。
俺が見つけた。
俺が見つけたんだ。
だからなんだよ、と思うことを、なぜか強く感じるのはなんでだ……?
自分でもよくわからない感情に支配されている。ずっと。
「どっか行きたいとこある?」
「い、いいえっ、……というか、てて、手が、っ!」
カメコは俺に捕まれた手を凝視して、慌てたままで。
「じゃあ、腹減ったし飯にすっか」
と、完全に握った手のことはスルーしそのまま歩く。離してやらない。
カメコといると、今までの自分が自分でいられなくなるような気がした。