その間カメコに気づかれないように、物陰から見ていたヤツらをギロりと睨んだ。
早速スマホを向けられ、身勝手に写真を撮られそうになっていたのだ。
ここで眼鏡をかければ、こいつがカメコだとバレる可能性もある。だったら本来の姿から到底想像のつかない今の姿のほうがいい。
俺と休みの日に一緒にいたなんて知られてしまえば、こいつにとって損でしかないからな。
「言われた通り、俺が攫ってやるよ」
「っ!?!」
そんな恥ずかしいセリフを恥ずかしげもなく口にしてはカメコの手を掴み、俺は小柄な体ごとグイッと引っ張る。
触れた手の感触が思った以上に柔くて、一瞬胸の音が変になった。
成績優秀、真面目な白胡桃に通っているカメコからしたら、容易に人を殴れる汚ない手に握られたくはないだろう。
それでも……────
朝の電車でずっと俺を見ていた理由が、ただありがとうを言うためだけだったとか。
喋るのが苦手だから、ちゃんと気持ちを込めて言えるようになりたいだとか。
そんな話があるかと思う。