「……っ、」
至近距離のこいつに、息を呑んだ。
まあ、予想はついていた。そうなんだろうな、と。
だからってわけじゃないが、さっきの男が上っ面しか見てないことには腹が立ったし、知らないんならそのほうがいいと思った。
けど、なんつーか……たぶん、慣れてんだろうなって。
泣かされるくらいのこと言われたのに、助けを求めるわけでもなく、何かを話すわけでもなく。
俺達にすぐ謝ってしまうくらい……カメコにとってはあれが当然のことで、あの男の言葉が体の隅々まで染みついてんじゃないかって。
そう思ったら余計にムカついて、だから一華に頼んだんだけど……。
「……ひっ……!」
俺を見たカメコの体が徐々に震えていく。
「ゆ、夕凪くんっ、ち、ちか……っ」
俺だって、しまったと思った。
こんなに自分が動揺すると思ってなかった。