まつりちゃん以外にも、こんなに優しい人達がいて、優しい世界があるなんて知らなかった。


私自身が下を向いて、怯えてこわがって。
殻に閉じこもって、知ろうとしていなかったからだ。


「あ、仁?終わったから急いで来て。瞬間移動で来てね」


一華さんは夕凪くんと通話を始めてしまっている。
同時に後ろからトントン、と肩を叩かれた。


「なちさん。記念に写真撮ってもいいですか?できたらSNS用にも!もちろんお顔は載せないようにしますので」


私が服を着替えている間、他のお客さんのヘアアレンジをし終えた雫さんが、スマホを持って目を輝かせている。


「……わ、私などで、お役に立てるのであれば」


そうして緊張しながらの写真撮影も何とか終えると、私は本来の目的を果たすために、雫さんや他のスタッフさんにも大きな感謝の気持ちを精一杯言葉にしていった。────