(どうして、夕凪くんはあんなことを言ったんだろう……?)


"こいつのこと可愛くしてくんねぇ?"────


私の格好の地味さに、見るに見かねたのだとすれば合点がいく。


だけど、男の子にそんなことを言われたのはもちろん初めてで。
ビックリして、胸が高鳴った。


夕凪くんのことが好きだと認識した後だと、余計に……。


ふわふわと浮かれてしまう気がするし、夕凪くんの一言で簡単に好きの気持ちが募ってしまう。


「なちさん。すみませんが、眼鏡を外してもらってもいいですか?良ければこちらに置かれて下さい」


目の前には大きな鏡の前に、先ほど何が良いかと聞かれて答えたお茶があった。


まるで美容室のようだけど、雫さんは髪は切らずに既存の髪の毛の形からヘアアレンジをしてくれるらしい。


(不思議な場所……)


私は言われるがまま眼鏡を取り、小物置きらしい外国風のトレイに眼鏡を置いた。