どこか胸が疼いて。
苦しくて。
たまらなく幸せで。


いつも人目を気にしてしまう私が、駅前で人が行き交う中でも構わず、夕凪くん宛に大きく手を振っていた。


側から見れば、誰に手を振っているかもわからない。変で恥ずかしい人……
それでも私の口元はゆるゆるになってしまっている。


すると手に持っていたスマホから、ブブッとバイブが鳴った。


"わかったから、早く電車乗れ"

"またな"


と彼らしいメッセージが届く。


夕凪仁くん。
彼はずっと私の憧れだった。


強いから。かっこいいから。……とか、表面で見えるところだけじゃなくて。


誰にでもいい顔せず、言いたいことはハッキリ言える。
私のできないことをなんの気なしにやってしまう。
そんな彼が、眩しかった。


それなのに、昨日までのただ見つめていた時と同じ感覚ではもう見られない。
こんなに多くの夕凪くんの優しさに直に触れれば、簡単に別の感情まで引っ張り出して連れてきた。